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第4回 使うのは自分の脳内物質だけ!今すぐ集中、やる気アップさせるコツ

集中できない、やる気が出ない、最後までやり遂げられない…。これらの「ばらつき」をなくすことが、仕事のパフォーマンスを上げるためには不可欠。絶対にミスは許されず常に100点を求められる医師が実践している、誰もがすぐにマネできる方法をお教えします。

■仕事の「ばらつき」をいかになくすか

 医師の仕事の場合、たとえば外科医が毎回オペの出来に差が出るなど許されません。常に最高のパフォーマンスを挙げることが、患者さんの命を救うことにつながります。それゆえ、「たった1回の120点、その他は60点」ではなく、「毎回100点満点」を取る必要があります。

 仕事において、一定の質を保つことが最も重視されるので、仕事の「ばらつき」をいかになくすかが大きな課題なのです。

 では「ばらつき」とは何でしょうか。仕事においては「ミス」や「失敗」などがこれにあたります。しかし、そもそも人間とはミスをする生き物です。そのことを念頭に置いた上で、「じゃあミスを未然に防ぐためにはどうする?」という発想が重要となります。

 仕事を完璧に・効率良く・スムーズにやる特効薬というのは、残念ながらないと思います。ばらつきをなくす方法に裏ワザはありません。野球のイチロー選手が毎日素振りをするのと同じで、基礎の積み重ね、練習の繰り返しが重要だと思います。

■パターン化で安定させる

 では「ばらつき」を少なくするためには、どうすればいいのでしょうか。まず日々の体調管理と道具の管理、意思決定のパターン化が不可欠になってきます。体調にばらつきがあったり、使う道具が日替わりだったり、意思決定の方法が気分次第で変わったりすると、パフォーマンスはなかなか一定になりません。

 ハイパフォーマーは、必ずパフォームする(一定の成果を残す)ことが大前提となります。ハイ(high)にするのは、まず今のパフォーマンスを一定にして、その後で下限を引き上げればいいのです。

 仕事でもそれは同じだと思います。長い目で成果を挙げる人になるためにも、「一発狙い」ではなく「安定感」を目指すとよいでしょう。

■「とりあえず始める」が吉

 仕事の「ばらつき」を避けるためにも、一定のパフォーマンスを挙げ続けるためにも、集中力は欠かせない力だと思います。
集中力に関してよく耳にするのが、「やる気を出すまで、集中するまでに時間がかかる」という悩みです。このような場合は、「とりあえず始める」ことをおすすめします。

 たとえば、「掃除をしたくないなあ」と思っていても、ひとたび重い腰を上げて掃除を始めると、意外と集中して気づけば部屋全体がピカピカになっていた、なんてことはありませんか?
これは、心理学者クレペリンが見出した「作業興奮」という考え方です。

作業興奮とは、作業を始めてみるとだんだん気分が盛り上がってきて、やる気が出てくることを指します。これには脳の一部である「側坐核」という部分が関与していて、実際の行動で刺激されると側坐核は活発になります。
これが活発になるとスイッチが入ったも同然。作業を難なく続けることができます。

■苦手なことこそイキナリ始める

 苦手なことに着手するときも、「作業興奮」を活用する方法はおすすめです。
・アポイントメントを入れることが面倒だったら、何も考えず受話器を上げて、いきなり相手に電話をかけてしまう。
・企画書作りは時間がかかるからと、つい後回しにしてしまう人なら、文書作成ソフトを立ち上げて、「○○の企画について」と、企画書のタイトルをいきなり打ち始めてしまう。
こんな具合に、小さな一歩を強引でも踏み出してしまうのです。

 ただ、「作業興奮」を活用にするには注意点があります。
・十分な睡眠で神経(側坐核)を休ませてあげること
・適度な運動で脳に刺激を与えること

 ガムを噛むことが嫌いではないという方は、やや小さめの味の薄いガムを噛みながら作業すると良いかもしれません。ある研究ではガムを噛む前と噛んだ後では噛んだ後の方が記憶力が良くなったとの結果があるようです。
顎の筋肉を動かすことも手軽にできる運動の1つです。

■最後までやり遂げるには「接近勾配の法則」

 さらに、「接近勾配の法則」というものがあります。これは、ゴールや目標達成が近づくたびに集中力がアップしていく傾向のことです。たとえば書類を作成しているときに、食事の時間が近づいてきても、書類完成までエイヤッとやり遂げてしまいたくなるあの感覚のことです。

作業興奮」で始めてみて、「接近勾配の法則」で完成させていくのが、忙しいビジネスパーソンにはピッタリかもしれません。
作業興奮」は、お金もかかりませんし、道具もいりません。使うのは自分の脳内物質だけという何ともエコな仕組みです。ぜひご活用下さい。

■掃除で気分を上げてから、仕事に取りかかる

 昔、船長は仕事がないとき、船員に厳しい号令をかけて甲板を磨かせたそうです。長い航海で何もせずにボーとしていると、心身ともに病みます。適度に身体を動かすことがちょうど良いストレス発散につながり、余計な考えも浮かばず、健康になることを知っていたのでしょう。

 同じことを私も実践しています。私の場合は、とりあえずデスクの片づけや本棚の整理をするようにしています。仕事の気分が乗らないときや考え事がまとまらないときは掃除です。掃除を始めて気分が乗り出したら仕事に向かうのです。

 ルーチンで行っている掃除もあります。一日の仕事が終わりデスクを離れるときには、必ず、机の上のものをできるだけなくすようにします。机の上にはデスクトップPCのみが残っている状態にします。
帰宅前の3分間で行いますので、「3分間クリーニング」と自分では呼んでいます。

 朝はいったんタスクをリセットして、その日の優先順位を考えます。しかし、昨日の資料がそのまま置いてあると、その仕事にかからなければならなくなります。
たまたま昨日の仕事の続きが最優先にヒットすれば良いですが、たいていは異なるタスクが優先順位の上位にきます。仕事柄、マルチタスクのことが多いので、一晩で状況が変わり仕事の優先順位が変わることが多いのです。

 朝一のタスクは、その日の朝になってみないとわからないので、デスクの上は白紙にしておくことが、最も仕事を始めやすいのです。
朝一は頭の回転が速くなっているので、余計なこと(前日の片づけ)に頭を取られるともったいありません。たった3分間の片づけですが、前日の片づけが翌日のパフォーマンスに直結します。

 工場などでは5S(整理、清潔、整頓、清掃、しつけ)を大切にしていると思います。5Sが徹底されている作業場は製品の質も良いし、安全面でも優れているというデータがあります。3分間クリーニングはそれを元にしたものです。ぜひオフィスワークにも応用してみて下さい。

 次回は体のコンディションを整える方法を説明します。