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最終回 食べながら仕事は効果的?食後眠くならないコツは?医師が実践している体メンテナンス

これまで緊急性や重要性、トリアージ思考などの優先順位のつけ方について、お伝えしてきました。最後に私が一番伝えたいこと、最優先事項である自分の体のメンテナンス方法についてお教えします。

■自分の体は最優先事項

ビジネスパーソンは体が資本です。健康だからこそ、最高のパフォーマンスを出すことができます。二日酔いや風邪をひいて体調が悪いとき、「気合いで乗り切る」「短時間なら大丈夫」「ドリンク剤で復活する」という人もいます。たしかに、短期決戦なら大丈夫でしょう。

 しかし、ビジネスは長期戦です。どこかでガタが出て、大きな失敗をするかもしれません。体調不良のときに緊急の案件が入ってくるかもしれません。たった一度の大きな敗北がこれまでの勝利を台なしにしてしまうこともあり得ます。常に一定の体調・健康度を維持し、ベストの体調で勝負に挑めるのが本当に強いビジネスパーソンになります。

「体」はメンテナンスをしっかりすれば自分でコントロールできるリソースです。すべてのタスクは体が資本です。ビジネスの鉄則として、自分の体メンテナンスをしっかりと心がけてみましょう。

■何はともあれ最優先は「睡眠」

 体のメンテナンスで一番優先すべきことは睡眠をとることです。
睡眠は、集中的に疲れを取るための大切な時間です。睡眠中は新陳代謝が活発に行われ、消化や吸収、排泄の準備が進みます。昼間のダメージが修復されて、元気な体に生まれ変わり、体の疲れだけでなく脳の疲れも回復します。

 不眠の人でも、たとえぐっすり眠れたと実感できるような良い睡眠が取れなくても、目を閉じて体を横にするだけで内臓や脳への血流が増え、疲労回復につながります。

■昼食後、眠くならないための3つのコツ

 次の優先事項は食事です。
私は、一日3食を絶対に守ります。これは食事で栄養補給という意味以外に、常に血糖値を維持しておく、脳に十分な栄養を送るという意味があります。

 しかし、食べる量には注意して下さい。昔から、「朝食は金、昼食は銀、夕食は銅」と言われますが、私の場合、「朝食:昼食:夕食=1:2:1.5」の配分を目指しています。

 朝からお腹いっぱい食べると、消化吸収するために内臓に血液が流れすぎ、脳への血流が減ります。朝からフルスロットルで働かなければならないビジネスパーソンは、脳への血流が不可欠です。朝食を一切取らないのは論外ですが、取りすぎるのも考えものです。
私の場合、昼食の比率が高めです。これは食事には楽しみの要素がありますので、昼食くらいは好きなものをやや多めに食べたいと思うからです。

 しかしここでも懸念が1つ。
「昼食をお腹いっぱい食べると午後の仕事が眠たくなるのでは?」
食べ過ぎて眠くなってしまった経験は皆さんあると思います。それを避けるには、次の3つが効果的です。

1.昼食前にコーヒーや緑茶を飲む
2.ゆっくり食べる
3.よく噛んで食べる

 昼食前にコーヒーや緑茶を飲むのは、眠気防止効果があるカフェインを体内に取り入れるためです。実は、カフェインの血中濃度が最大になるには15〜30分ほどかかります。食後のコーヒーや緑茶ではカフェインの眠気防止作用にタイムラグが出てしまいます。早めにカフェインを摂取するのがポイントです。
この場合、熱いコーヒーや緑茶の方がカフェインの体内への吸収が早いと言われています。

 ゆっくりとよく噛んで食べると、脳の満腹中枢が刺激され、少ない食事でも満腹感を得ることができます。少ない食事で済むということは、消化管に流れる血流も少なくて済むということです。
また、よく噛むことで口の中で十分に食べ物が砕かれ唾液と混じり合い、胃や小腸での消化吸収を助けることにつながります。その分、消化管への負担を減らせるのです。

 この3つはすべて今日からできる眠気防止策です。ぜひ取り入れてみて下さい。

■食べながら仕事って効果的?

 基本的に「ながら仕事」は集中力を低下させます。厳密に言うと仕事に使うべき脳への血流を低下させます。
また、原則的に、人間は同時に2つのことをできません。

「ながら仕事」が可能になる例外は「反射的な行為」、または「目をつぶってでもできる行為」の場合です。
歩きながらものを考えることが可能なのは、歩くのが人間にとって目をつぶってでもできるほど慣れた行為だからです。一方、全力で走りながらものを考えることはできません。足の筋肉に血流が大量に流れ、ものを考える脳には血流は維持量程度しか流れません。

 では、食事をしながらの仕事は可能なのでしょうか? また、効率的なのでしょうか?
私はおすすめしません。その理由は目をつぶってでもできる行為ではないからです。でも口をモグモグ動かすことは目をつぶってでもできる、と言う人もいるかもしれません。

 お弁当を例に取りましょう。フタを開けて、箸やフォークを使って食べ物をつかみ、こぼさないように口まで持ってきて、箸を汚さないように元に戻す。このようなすべてが「食べる」という行為です。かなり神経を使う行為があり、その都度、仕事への集中力の小休止が必要となります。

 デスクの上が汚れたり、シャツにソースが飛んだりするとさらに気を使います。弁当を食べた後はゴミを捨てるために席を立つ必要があるかもしれません。おまけに、食べ物を体の中に入れると消化管の血流が増えるのは間違いありません。その分、脳への血流が相対的に減ってしまい、集中力は落ちやすくなります。
お弁当だけでなく、片手で食べられるスナックや固形状の栄養補給食品も同じです。封を開けたり、こぼれないように注意したり、ゴミを片づけたり、といろいろな作業が増えるのです。

 やはり仕事中は、何も食べずに目の前の仕事に集中したほうがよいと思います。

■横になるとアルコール分解能アップ

 最後に、これから忘年会シーズンということで、お酒に関するお話を。
ビジネスパーソンは、お付き合いや仕事のストレス発散のためにアルコールを飲む機会も多いと思います。しかし、明日も仕事がありますので、できるだけ翌日に持ち越したくないですよね。深酒した場合でも翌日の目覚めはすっきりしたいものです。

 そんなときは、アルコールを飲んだ後、水分を多めに取り、体を横たえ肝臓への血流を増やしてあげましょう。
アルコールの分解は肝臓でなされます。肝臓の血流量が増えると、その解毒作用が促されます。人は立っているときよりも横になっているときのほうが、肝臓への血流量は約30%も増加するのです。

 さらに肝臓でのアルコール分解には糖分が必要です。
私はお酒を多量に飲んだ後は、糖分を含んだスポーツドリンクを帰り道に買って、家に帰ってからではなく、購入後すぐ飲むようにしています。このときもできたら常温のスポーツドリンクがおすすめです。
冷えたスポーツドリンクは胃に刺激が強く、体を冷やします。お茶やコーヒーなどのカフェインを含む飲み物は利尿作用があるため、体内の脱水を進める危険性があるので、飲酒後は控えて下さい。

 飲酒後はひたすら「肝血流量を増やす」ことを心がけましょう。

 これまで5回にわたって、医師である私が普段、何気なく実行していることをお伝えしてきました。それが皆さんにとって、最高のパフォーマンスを出すための一助になれば幸いです。