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第3回 潜在意識に訴えかけろ!「書かない」メモ術・手帳術

超多忙で毎日時間がないうえに、仕事でミスは絶対に許されない。そんなハードな状況で医師はどうやって日々スケジュール管理を行い、最新の情報を取り入れて、更新し続けているのでしょうか。現役医師である裴英洙(はいえいしゅ)先生が実践しているユニークなメモ術・手帳術をご紹介します。

■自分の頭にS字フックをかける

 私はメモの取り方にも自分なりのルールを作っています。これが正しいかどうかはわかりませんが、私の場合は基本的に名詞を羅列しています。つまり、メモは文章にしないのです。

 今5年前の私のメモを見返してみました。そこには、「コバンザメ戦法」と書かれています。他人が見たら何のことかわからないかもしれません。でも誰に見せるわけでもなく自分で見返すだけですので、自分が理解できたら十分です。
綺麗に書こうとせず、時間をかけて細かいところまで書くこともしません。自分の頭にS字フックをかけるようなイメージで、できるだけ短い単語で記録します。

「コバンザメ戦法」というメモを書いたときの光景を思い出してみると、「自分はコバンザメのように、偉い人・立派な人のそばで取るに足らない存在として邪魔にならないようにくっつく。その間に彼らから学ぶ」という意味で書いたことを記憶しています。「コバンザメ戦法」という一言だけで、しっかり記憶のフックになっています。

  中には自分で書いたものの、意味不明なメモもあります。そんなときは深く考えずに、自分で見返して意味がわからないメモならその程度の内容なのだ、と諦めます。

■「メモ」を文章にしない3つの理由

 私がメモを文章にしない理由は3点あります。

・文章を書く時間を節約する
・追加で書くスペースを確保する
・トリガーメモとする

 メモを書くときは、誰かの話をメモする場合が圧倒的に多いと思います。上司やクライアントさん、講演、授業などで誰かが話していることをメモする場合です。その際に文章で書いていると書くことに集中してしまい、肝心な話を聞くことが疎かになりがちです。だから、メモは最小限にし、話を聞くことに最大限の注意を払いたいのです。

 実は、メモを後で見返すと、新たに気づいたことや追加したいことが結構出てきます。その際にぎっしりとメモ帳が埋め尽くされていると、追加で書くスペースが残されていません。せっかくメモが発展するチャンスを逃したくないので、最初はできるだけ隙すきで書いて、追加する余地を残しておくのです。

 メモを文章で書いていると、その一文だけに縛られてしまいます。しかし、「コバンザメ戦法」と名詞だけ書いてあると、後から読んだときにそれをトリガーとして解釈が広がります。その後の自由な発想を妨げないように、発展の余地を残すために、あえて文章にしないようにします。

■手帳は「スタート時間」しか書かない

 スケジュールの書き方にもゆるやかなルールを設けています。
私のスケジュール帳は手書きで、1週間の見開き、24時間タイプのものです。いわゆるバーティカルという縦が時間軸になっているものを使用しています。メモ帳と同じで「縦は時系列」という基本をスケジュール帳でも合わせています。そのためスケジュール帳もメモ帳も、パッと見て考えることなく「縦=時間」という感覚がつかめます。
ここでも余計なことを考えなくてすむようにできるだけ手抜きをしています。

 スケジュールを書く際に、タイムラインの書き方にも少しだけこだわりがあります。
基本的にはスタート時間のみを書きます。正確に言うと、時間軸がすでに記入されていますので、スタート時間に丸をつけるだけです。終了予定時間までマーカーで塗ったり、矢印を引き延ばして書いておく人もいると思いますが、私はそうはしません。スタート時間だけです。
「この時間にこの場所に行っておかなきゃ」がわかれば十分なのです。

■潜在意識レベルで自由にする

スタート時間に丸をつけるだけのスケジュール帳
 たとえば、1. 13時〜17時、自社オフィスで会議、2. 18〜20時、A病院訪問、と2つの予定があるとします。
もし最初の予定が16時に終わったとしたら、あとの時間は次の予定の18時まで自由になります。こういう事態に備えて、スケジュール帳の上ではスタート時間だけ明記し、自由時間の可能性をわざと作っておきます。

 仮に13時〜17時までの予定として、矢印を17時まで引いてしまいますと、「17時までいなきゃいけない」「17時まで拘束される」という潜在意識が働いてしまいます。そして、その場で必要がない仕事までしてしまう恐れがあるのです。この場合ですと必要がないのに、ダラダラと会議を続けてしまう可能性があります。

 予定は終了時刻まで埋めなければならないというものではありません。早く終われば次の訪問先に前もって移動してミーティングの準備をするのも良し、図書館に寄って調べものをするのも良し。極力、スケジュールに縛られずに臨機応変に対応できるようにしておきたいものです。
もし空いた時間に緊急の案件が入ってきたら、そのときはすぐ対応できるのです。これも「いざ!」というときに備えるコツの1つです。

 次回は「ばらつき」をなくすプロの技をお伝えします。