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川島永嗣に学ぶ“ドヤ顔”の作り方 自信を持ち続けるための2つの習慣

木崎 伸也 :スポーツライター 2013年02月28日

つねに自信に満ちた表情を見せる川島。チームメートにとって頼りになる存在だ(写真:Getty Images)

■キャプテン長谷部がつねに相談する男

即時の決断が求められる急場においても、自信に満ちた表情を保ち続けられる人物は、どんなチーム(組織)においても頼りにされるだろう。日本代表GKの川島永嗣は、まさにそういう人物だ。

2010年南アフリカW杯では、大会直前に正GKに抜擢されると、好セーブを連発して日本代表のグループリーグ突破に貢献した。どんなピンチにも動じず、闘志あふれる貫禄に満ちた表情は、ピッチ上の“ドヤ顔”として話題になった。

リーダーシップも優れている。

日本代表のキャプテンといえば長谷部誠だが、長谷部はチーム内で何かしらアクションを起こすとき、ほぼ必ず、事前に川島に「どう思う?」と相談を持ちかけている。2人は代表の飛行機移動で隣の席になることが多く、その場はさながら幹部会談に。川島は副キャプテンのような存在だ。

では、なぜ川島はどんな大舞台でも“ドヤ顔”でい続けられるのか? 『準備する力』(川島永嗣著、角川書店)で語られているように、自己マネジメント能力が突出していることは間違いないが、ここでは2つの“習慣”に注目したい。

1つ目は「自己肯定」の習慣だ。

サッカーはチームスポーツのため、上司や同僚、もしくは環境に責任転嫁をしやすい。選手のチームに関する愚痴は、日常茶飯事だ。

だが川島は、いっさい自分のチームを批判しない。所属する組織への批判は、自己否定をするのと同じと考えているからだ。

こんなエピソードがある。現在イングランドでプレーする吉田麻也が、まだオランダのフェンロでプレーしているときのことだ。戦力が限られたフェンロは攻め込まれる時間が長く、DFの吉田は試合中に何度もピンチにさらされ、フラストレーションがたまる日々を送っていた。日本代表に招集されてチームメートに会うと、どうしても「最悪っすよ」と愚痴が漏れてしまう。

そんな後輩に、川島ははっきりと言った。

「マヤ、オレたちは今いるところでやるしかないんだ。おまえがフェンロを『ダメだ、ダメだ』って言っているのは、フェンロを選択した自分自身を批判していることになるんだぞ」

これ以降、吉田はチームの愚痴を言うのをやめ、「ここは自分を高める場だ」と考えられるようになった。川島の言葉がなくても、いつか吉田はイングランドへの移籍を果たしていたかもしれないが、この言葉によって成長スピードが速まったのは間違いない。

■「パテック・フィリップ」を“衝動買い”した意味

2つ目は「思いを込めた物を持つ」という習慣。

冒頭で触れたように、2010年W杯の大会直前、突然、川島は日本代表の正GKに抜擢された。準備ができていないGKだったら、ガチガチになったまま大会を迎えたかもしれない。

だが、川島は違った。

南アフリカに飛ぶ前に行われたスイス合宿の最終日、選手にはジュネーブで自由時間が与えられた。そのとき、川島は周囲を驚かせる行動に出る。超高級腕時計「パテック・フィリップ」を“衝動買い”したのだ。「パテック・フィリップ」の平均価格は、約400万〜600万円。気軽に手が出せる値段ではない。

当然、この買い物には大きな意味があった。川島はこう説明する。

「自分にとっては、こういう瞬間は二度とないと思ったんです。ずっと欲しかったブランドの時計の本店がジュネーブにあって、さらに自分がW杯に出るかもしれないという状況だった。本当はW杯が終わったら自分へのご褒美として買ってもいいかなとか、ヨーロッパに移籍することがほとんど決まっていたので、ジュネーブに寄って買おうかなとか思っていたんですが、これだけ条件がそろったら『買うしかない!』と」

■おカネ以上の価値がある買い物

思いを込めて特別な物を購入し、それをお守りのようにする――。それが川島の流儀だ。

「僕は物には『思い』があると考えているんです。思い入れのある物を持ちたい。そうすれば物に対して違った見方をするし、自分にとっても特別な物がすぐ身近にあることになる。そういうのを大切にしたほうがいいのかなって思うんです」

「自分があのときに買った時計はもちろん高かったですけども、それが値段の価値だけかっていったら僕にとってはそれだけじゃない。僕がああいうタイミングで買うことで、おカネ以上の価値が自分にはあるわけじゃないですか。だから高い物を買うにしても安い物を買うにしても、そういう思いがある買い物をしたほうが、自分にとっても『いい買い物』になるんじゃないかなと」

川島は自分の誕生日には、必ず自分へのプレゼントを買うようにしているという。誕生日をただのお祝いにするのではなく、次なる一歩を踏み出す特別な節目として意識するためだ。

自信に満ちた表情は、周りにも勢いを与える。川島が最後尾から醸し出すオーラが、日本代表の攻撃サッカーを支えている。

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「マヤ、オレたちは今いるところでやるしかないんだ。おまえがフェンロを『ダメだ、ダメだ』って言っているのは、フェンロを選択した自分自身を批判していることになるんだぞ」

⇒ なんか似たようなことをよく耳にする今日この頃。

いや、学ぶところはその後の文章。