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「初訪問なのにいきなり商談」で取引先が激怒!

なぜ世間話のできない若手営業マンが増えたか

取引先と商談などをする際、何の前置きもなくいきなり仕事の話を始められたら失礼…と感じる人は少なくないはず。ところが最近、そんなぶしつけな20代が増えています。

普通であれば、些細な世間話でもして、具体的な商談の前にお互いの気持ちをほぐす努力をしたいもの。それをしないのは怠慢と言いたいところですが、彼らが世間話をしないのには理由があるようです。実は本当は世間話をしたいと思っていながら、人見知りが激しいために、できずに悩んでいる…のが実情だからです。

そこで今回は、世間話ができない若者の実態をご紹介するとともに、上司と部下の間にある気持ちのギャップを埋めるヒントを紹介したいと思います。

「初対面の人に話しかけられない」
“人見知り20代男性”はなんと47%!

いくら時間がないと言っても、取引先を訪問して、いきなり商談などの本題に突入するのはいかがなものでしょうか?できればお互いに打ち解ける状況になるまで、世間話で場を盛り上げる状況をつくりたいもの。ところが、最近の20代のビジネスパーソンは世間話が大の苦手だと言います。

マイナビが『20代の本音ランキング』という調査のなかで、「自分が人見知りだと感じる瞬間」を聞いたところ、「初対面の人に自分から話しかけられない」と答えた男性が47%に上っています。さらに、

・微妙に知り合いの人でも、2人きりになると話せない 
・顔見知り程度の人と世間話をするのが苦手 
・買い物中に店員に話しかけられるのが苦手

という人も少なくない模様。それゆえ、自分から何か話さなければいけない状況をつくることを極力避ける傾向があります。

システム会社に勤務しているSさん(25歳)は、人見知りで世間話が苦手。そのため、仕事で上司や同僚と取引先まで移動する時間が苦痛で仕方ありません。先日もオフォスから約1時間、職場のエンジニアと電車に乗る機会があり、辛い時間を過ごすことになりました。

「同じ車両で横に並んで座って、沈黙が続くのは辛いです。ただ、スマホを見て時間つぶす訳にもいかない状況。そこで世間話を切り出したのですが、すぐに話題が途切れてしまいました。その後の到着までの時間は、長く感じられて大変でした」

自分と似たようなタイプとわかれば話も盛り上がるかもしれませんが、苦手なタイプであれば本当に会話に困るようです。

ちなみにSさんは、自宅に帰ればネットで自分のお気に入りのサイトを見て時間をつぶすのが好きなタイプ。仕事上での会話は極力メールで行い、それでは伝わらないことだけ口頭で伝えることで仕事が完結してしまっているのが実態です。ゆえに、誰かと世間話する機会が皆無に近いのです。

ちなみに最近、団体行動を経験できるサークル活動に参加する大学生がこの数年で激減しているという話もよく耳にします。さらに、コンパにさえ参加しないのが当たり前の時代になってきたようです。

では、学生時代を何で過ごしているかと言えば、

 ①真面目に授業に出席
 ②3年生秋から就活準備
 ③空いている時間は1人で過ごす

というのが典型的なスタイル。誰かと対話して時間を過ごすことが、大幅に少なくなっているのです。

ちなみに私自身は学生時代、授業や就活に時間をかけるより、友人とくだらない話をして時間を過ごすことが多かった気がします。当時は「無駄な時間かもしれない」とも感じましたが、振り返れば、他人との会話力を高める鍛錬に多少は貢献していたのかもしれません。

■20代の飲酒割合は30〜40代の半分以下 同僚と飲むことさえ苦手な若者たち

さて、話を戻しましょう。最近は、会社帰りに同僚と飲みながらたわいもない会話をする若者も減ってきているようです。厚生労働省が2010年に行った「国民健康・栄養調査」によると、20代の飲酒習慣のある人の割合(週に3日以上飲酒し、飲酒日1日あたり1合以上を飲酒)は14.7%と、30代(31.0%)や40代(40.9%)の半分以下。このデータには自宅での飲酒も含まれますが、おそらく外飲みだけで比較しても同じような結果になるのは間違いありません。

取材した広告代理店に勤務しているCさん(24歳)も、同僚と飲みながら話すのが苦手な1人。

「職場の同僚とオフォス以外で会っても、何を話していいかわからないので飲みに行きません」

と、話してくれました。飲みに行かないのは、アルコールが苦手だからではなく、本当に仲のいい友達以外と会話する自信がないのが原因のようです。

このように、先輩社員にとっては肩の力を抜くためにするはずの世間話が20代にとっては苦痛でしかないことは明らかです。

ゆえに、ましてや営業職として社外の人と世間話をするのは格段に難度が高い仕事と彼らは感じています。以前なら上司が、

「打ち合わせが延びてしまったので、アポイントに30分くらい遅れそう。悪いけど、世間話でもして時間をつないでくれないか?」

と部下に指示すれば、当たり前のように世間話で場をつなげたものでした。

ところが最近は、遅れた上司が到着すると、「応接室でお客様と部下が重苦しい雰囲気で黙って待っていた」などという、笑えない話を聞いたりする時代になりました。それだけ、20代の社員にしてみれば世間話は簡単なことではないのです。

しかし実際、それに気づかず、部下に取引先との商談を任せたために、痛い目にあった上司がいました。

■初対面で自己紹介なくいきなり商談 「担当を変えてくれ!」の言葉に上司は…

損保会社に勤務するDさんは、ある日突然、取引先から連絡を受けました。その内容はクレームでした。

「君の部下でT君という若手営業がうちの担当になったのだが、悪いが変えてくれないか?でないと、一切の取引をやめることにしたい」

言葉は選びつつ、丁寧ながら、怒りに震えているのがわかります。そこで詳しく内容を伺ってみると、この秋から担当が変わり挨拶に行った際に起きた事件が原因のようでした。

「この度、御社の担当をさせていただくことになりました。よろしくお願いします。早速ですが、新たにご提案したいことがございます。本日は提案書を作成してまいりました。簡単に説明させていただきます」

いきなりこう切り出したTさん。この様子に相手はビックリ。何か自己紹介があるに違いない、あるいは新たな担当としていろいろ質問を準備しているはず…とお互いが理解しあえるための話題を提供してくると思い込んでいました。これまでの新任担当は当たり前のようにそうしてきたからです。ところがTさんは違いました。

少々戸惑ったその取引先は、

「いきなり提案はいかがなものじゃないかな?」

と切り出しました。すると、Tさんは困った顔をして、

「では、どうしたらいいのでしょうか?」

と返答。自分は間違っていないとでも言いたいような態度です。この態度に取引先はついにキレてしまいました。

「初対面でいきなり仕事の話をするとは失礼だ。帰ってくれ」

その場には、冷え切った重い雰囲気が立ち込めました。それでもTさんには、場の空気を和ませよう…と世間話をする気はさらさらないようです。

そしてTさんは、「わかりました。では帰らせていただきます」と席を立ち、帰っていきました。これでは相手が怒るのも仕方ありません。

ただ、そうしたクレームを受けても上司であるDさんとしては、担当を簡単に変えるわけにもいきません。

「申し訳ありません。当分は自分が担当させていただきます」

そう対処して問題を収束させることにしました。ただ、これですべて解決とはいきません。次はTさんへしかるべき対応をしなければならないからです。

■若者が世間話をしないのは「苦手だから」 上司の温かいフォローで改善も

Dさんは部下のTさんに声をかけて、クレームがあったことや、それにDさんが対処した事実を伝えました。さらに、

「お互いのことを分かり合うために世間話を大事にすべきじゃないかな」

と、アドバイスを加えました。おそらく「世間話なんて不要だと思います」と反抗的な答えが返ってくるだろうと思っていました。しかし意外にも、

「そうですね。でも、苦手なのです」

と、なんとなく寂しそうな反応が返ってきました。どうやら自分の対応が不十分であったことはわかっているようでした。

これからTさんにどうフォローをしようかと悩みつつ数日が過ぎていきました。すると、タイミングよくメールが届きました。

「先日の対応でご迷惑かけてすいません。いきなり仕事の話、では取引先とも信頼関係なんて生まれませんよね?大いに反省する機会となりました。ただ、人見知りが激しくて世間話が上手くできないのです」

と、反省した内容。どうやら世間話をすること自体が難関だと感じているようでした。

このように会社同士はこれまでも付き合いがある関係でも、担当者同士が初対面であれば、分かり合うための努力は必須です。そのために世間話は効果的な手段ではないでしょうか?

ただ、世間話は意外と難しいもの。「暑いですね」とか「雨になりましたね」と、天候に関する世間話をただするだけでは、ムダな時間になってしまう可能性もあります。その話題では、本題とつながる次の展開が何も見出せないからです。おそらく、「そうですね」「雨ですね」と返答が返ってくるだけでしょう。お互いの理解度も高まりませんし、信頼を高まりません。逆に「そんな無駄話はいいから」と苛立たせるだけかもしれません。

あくまで世間話では、

・お互いが仕事に向き合うためのきっかけづくり
・関係構築のための相互理解の機会

になる話題を提供したいもの。例えば天気の話であっても、このようにすれば、新たな仕事が生まれるきっかけにすることも可能です。

「平均気温が1℃上がると、御社の製品はどれくらい売り上げに影響するのでしょうか?」

こう質問してみたら、どうでしょうか?相手に対する関心を示すことになりませんか?

世間話はやはり簡単ではありません。20代のビジネスパーソンも決して世間話がしたくないわけではなく、上手くできないから避けている…というのが本音ではないでしょうか?

ですから上司は、彼らを無下に非難するだけでなく、手を差し伸べて世間話のコツを教えてあげてください。意外と彼らは素直に受け入れてくれますから、「いきなり仕事の話ですか」という状態から脱却してくれるはすです。