なぜ、自分を選ぶべきなのかを、相手に説明できるか
プレジデントオンライン2013年11月27日(水)
とてつもない報酬をつかむには、いかに自分のブランドを確立するかがカギになる。
私が36歳で独立したとき、下の娘はまだ生まれたばかりだった。ふたりの娘を育てあげるのに稼ぎつづけなくてはならない。
はたして、退社したときの年収以上稼ぐことができるのか。
私は広島で株式会社オフィシャルを設立し、保険営業を中心としたファイナンシャルプランニングの事務所をはじめた。広島を選んだのは、たまたま最終勤務地が広島だったからだ。日本全国、どの土地で事務所を構えても、サラリーマン時代以上に稼ぐ覚悟だった。
税理士や社会保険労務士たちの共同事務所の一角に間借りさせてもらって、オフィシャルがスタートした。
私の最初の法人顧客は、山口県で美容室グループを経営するH社長だった。
はじめてH社長にお目にかかったとき、私は次のような自己紹介をした。
「私は、最初の損害保険会社では最短、最年少でマネジャーになりました。査定の評価はずっと最高のSランクでしたし、5年目からは毎年、MVPで表彰されていました。そのあと転職した生命保険会社では、同じく最短でマネジャーになりました。MVPのほかに、総合点での全国1位を損保、生保時代を通じて、4回とっています」
ところが、これを聞いたH社長から、
「そんな自己紹介は、独立してからは通用しないよ」
と叱られたのだ。
つまり、こういうことである。
経歴を並べただけの自己紹介では、相手は「何だ、結局サラリーマン時代の延長線上でやっていくのだな」と思うだろう。
もちろん、過去の実績は大事だ。だが、これでは過去にしか自分の売りものがないと、わざわざ宣言しているようなものだ。
広島のオフィスには、サラリーマン時代の表彰状やトロフィーが数え切れないほど飾ってあるが、そんなものは何の役にも立たない。
そうではなく、ここで売りものにすべきは、大手損保や生保の単なる代理店としてではなく、江上治として、どのような付加価値を提供できるかである。
それには、相手にとっての未来のビジョンを描いてみせることが必要なのではないか。そこに顧客がついてきて、はじめて江上治のブランドが確立できるのではないか。
ただ保険という商品を買うだけであれば、誰から買うのでも同じだ。江上治を選ぶ理由は、どこにもないのである。
それを、H社長は教えてくれたのだ。
オフィシャルを設立してから、私は個人や法人向けにライフプランセミナーを開催し、それらのセミナーにきてくださったお客さまをターゲットに、保険についての個別相談と、資産運用に関する提案を行っていた。そこに、人生計画の立て方や、そのための現状分析のやり方など、ライフプランニングのための新しいコンテンツを加えることにした。
さらに、経営者相手の相談では、会社のバランスシートを見せてもらい、保険商品を活用しての節税対策を提案するなど、江上治としての強みも打ち出した。
このようにして、オフィシャルとしてのブランドを確立していったのだ。
こうしたブランドなくして、とてつもない報酬への道を歩むことはできない。
【年収1億を生む黄金則】過去の実績や成功体験でなく、つねに現時点での「ブランド」で勝負する。
(※『プロフェッショナル ミリオネア』(プレジデント社刊)第5章「捨てる、決断する」より)