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2013年4月23日 20:12 (ナショナルジオグラフィック)

オスのヒョウの子殺し、撮影に成功

ボツワナのオカバンゴ・デルタで暮らすオスのヒョウ「ンモライ(Mmolai)」。このあと、写真の子どもを食べていた。 Photograph courtesy Ryan Green (ナショナルジオグラフィック)


 南部アフリカのボツワナで、オスのヒョウ(学名:Panthera pardus)が子どもを食べる珍しい写真が撮影された。

 オカバンゴ・デルタのモンボにあるサファリキャンプ、「Wilderness Safaris」のライアン・グリーン(Ryan Green)氏は3月、デルタでよく知られたメスのヒョウ「レガデマ(Legadema)」の生態を記録していた。大木の樹洞で育てられていたのは、生後数週間の子ども数頭だ。

 あるとき、そわそわ歩き回るレガデマに気付くと、見知らぬオスが子どもを咥えて巣穴から出てきた。子ヒョウを連れて木陰に入り、戯れたりなめたりする様子は、「愛情さえ感じられた」という。

 しかし、それは表面だけで、実際には(人間から見れば)とてつもない悪意が潜んでいた。後に「ンモライ(Mmolai、現地ツワナ語で殺し屋の意)」の名をもらうオスは、ゆっくり味わうように子どもを食べ始めたのである。

 ンモライが去った現場は、「何の痕跡もなく、血一滴、毛一本残っていなかった」とグリーン氏は話す。同氏は、この後、残った子どもを運び去るレガデマも撮影している。

 人間の感覚では恐ろしい出来事だが、野生動物の世界では珍しくない。大型ネコ科動物の保護団体「パンセラ(Panthera)」の代表を務めるルーク・ハンター(Luke Hunter)氏によると、特にオスが新しい縄張りを奪ったときに発生し、血縁関係のない子どもが殺されるという。パンセラは、ナショナル ジオグラフィック協会のビッグキャット・イニシアチブと提携している。

 この行動はアフリカライオン学名:Panthera leo)で知られているが、大型ネコ科動物の実際の行動が記録されるのは珍しい。ハンター氏も貴重な写真だと話している。

■子殺しの理由

 ハンター氏のチームは、南アフリカ共和国のクルーガー国立公園周辺で13年前からヒョウの子殺しを調査している。死亡を確認した子ヒョウ280頭のうち、45頭はオスに殺されていた。

 新たに縄張りを獲得したオスにとって、子殺しには合理的な理由がある。子を失った母親が発情し、交尾の機会が増えるからだ。自分の遺伝子を残すことが最優先で、「継父にはなる余裕はない」という。

 オスが子どもの血縁を見分ける方法は確認されていない。においで区別しているとは考えにくく、過去の母親との遭遇経験から識別している可能性が高い。

 もちろん母親は、見知らぬオスから子どもを守ろうとする。しかし、縄張りを奪われてしまった場合は守り切れず、結局殺されてしまう。

 ただし、オスのヒョウがいつも“残忍で凶悪”な行動をとるわけではないという。縄張りを持つオスは、メスや子どもと触れあう時間も多く、長期的な信頼関係を築いている。我が子に対しては「良き父親」であり、世話や保護を怠らない。