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日本の電機産業について…Tech-On!号外メールより

日経エレクトロニクス編集長の浅見氏のコメントより。

イノベーションのジレンマという言葉があります。かつての成功体験から脱
却できず、次のイノベーションを埋めない現象をさす言葉です。」
という言葉がとても印象深かった。
これはエンジニアだけでなく、今の日本社会全体にも言える事だと思う。
そして、今の若い世代は働く事への情熱を知らず、夢をもっていない(人が多い)。
過去依存、他社依存の風潮がしつこく根付いているように思えてならない。
何だかみんな、他人事だ。

いかに自己責任で自分から発していくか、を自分自身にも改めて問いたいと思う。

 今年も残すところ、あと1カ月となりました。さて、2012年はどのような年
として歴史に刻まれるのでしょうか。日本の電機業界は歴史的転換点に差し掛
かっています。日本の電機産業を牽引したテレビ事業を抜本的に見直し、未来
に向けた新たな体制の確立が急務となっています。今春、大手家電メーカーの
トップが相次ぎ交代しました。

  ソニーは、ハワード・ストリンガー氏から平井一夫氏へ。
  パナソニックは、大坪文雄氏から津賀一宏氏へ。
  シャープは、片山幹雄氏から奥田隆司氏へ。

 いずれの3社もテレビ事業の不振にあえいでいます。1980年代に、多くのテ
レビ・メーカーを撤退に追いやり、世界市場を席巻した勢いは消え去り、韓国
勢に対して防戦一方です。打開策はあるのでしょうか。

 リビングルームに鎮座するテレビは、確かに家電メーカーにとってフラッグ
シップでした。テレビ市場で強いことが家電メーカーのブランド力向上に直結
し、その副次効果として他の家電製品もつれ売りしましたが、それは過去の話
です。スマホタブレットなど、新しい電子機器が普及するにつれ、ライフス
タイルは大きく変化、テレビの存在感は相対的に薄れつつあります。

 ならば、いかに脱テレビの路線を歩むか――これが家電メーカーの生き残り
策となることでしょう。

 今から10年ほど前、シャープのCTOだった太田賢司氏に取材したときのこと
を思い出します。当時のシャープは、液晶パネルの量産に沸き立ち、一心不乱
に大型投資にまい進していました。太田さんは、「シャープは中小企業。常に
目の付け所を工夫することで、新たな商品を生み出してきた。これからも、こ
の精神を大事にしたい」と、急成長する液晶テレビへの依存度が高まることに
警鐘を鳴らしていました。カメラ付きケータイや左右両開きの冷蔵庫など、個
性的な商品企画でヒットを生み出すことがシャープの強みでした。大型投資を
必要とする強大なフラッグシップ商品をもってしまったことで、軽いフットワ
ークでヒット商品を生み出す気質が薄れてしまったのではないでしょうか。

 次にパナソニック。このところアジアで次から次へと現地のニーズに応えた
ヒット商品を生み出しています。例えばインドの炊飯器。20年越しで現地の生
活環境を学び、当時の出荷台数4万台から現在は100万台と躍進を遂げました。
シェア5割を誇ります。インドネシアでは、現地の女性が化粧品を冷蔵庫に入
れているのを知り、化粧品用の専用ボックスを背面に設けた冷蔵庫を開発、
ヒットを飛ばしています。まさに、ナショナル店を日本全国に配備することで
松下幸之助水道哲学を実践したかのように、現地に根をはった製品企画づく
りがグローバルにおけるパナソニックの強みとなり始めました。

 最後にソニー。心配です。ソニーを創業時の設立趣意書には、「真面目なる
技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の
建設」と記されています。創業者の井深大氏が、技術者たるものどうあるべき
かを説いた一文です。今のエンジニアはどうでしょう、 それだけに気概を持
ち、夢と熱意を抱き続けているでしょうか。ソニーに限らず、日本の製造業の
エンジニアが失いつつあるエンジニア魂の原点がここに記載されています。か
つて私が編集長だった際、パナソニックのエンジニア500名の前で講演をした
ことがあります。その際、質疑応答のセッションにて、一人の聴講者から、こ
んな質問を受けました。「ソニー松下電器産業、何が違いますか」と。私は
こう答えました。「ソニーの人は、ライバルのことを気にかけていません。未
来だけをみています」と。横並び意識をきらい、未来に向かってまい進する姿
勢こそがソニーの強みでしたが、そうしたエンジニア魂がどれだけ伝承されて
いることか、やや不安に思います。

 さて、では日本の電機産業はどうすべきなのか。「日本のお家芸、電機復活
への処方箋」と題して、東京・大阪にてパネル討論会を開催する運びとなりま
した。東京会場では、「今でも僕はエンジニア」と自認するプレイステーショ
ンの父、久夛良木健氏を、大阪会場では、長きにわたってパナソニックのCTO
を務め、歯に衣着せぬ物言いでエンジニアを叱咤する古池進氏をパネリストに
向かえ、日本のエレクトロニクス業界に対して、熱く厳しい提言をいただきま
す。詳細は下記をご覧ください。

 イノベーションのジレンマという言葉があります。かつての成功体験から脱
却できず、次のイノベーションを埋めない現象をさす言葉です。脱テレビ、大
胆な発想に基づくエンジニアの夢こそが、次なるイノベーションの原動力だと
私は考えています。