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水源の森 外資買収攻勢…西日本にも触手

淀川水系の源となる森林。水源地は外資による買収が懸念されている(奈良県宇陀市で)

森林など水源となる土地が中国などの外国資本に買収されるケースが北海道など東日本で相次いでいる。海外では渇水や環境汚染で飲料水が不足する国が多く、外資の買収が無制限に行われれば、下流域での水供給への影響が懸念される。西日本の森林にも外資の触手が伸び始めており、水源の森を守る条例を制定する自治体の動きが広がっている。

「広くても狭くてもいい。森を買いたい。中国資本がついており資金は潤沢だ」

2月中旬、奈良県宇陀市森林組合に、ジャンパー姿の男2人が突然訪れた。「大阪の企業経営者」と名乗る年配の男らの話を約30分間、テーブルを挟んで聞いた三本木康祐組合長は「奥深い森を買う目的は水しかない。まともに売買できる相手じゃない」と感じた。「売る山林はない」と断ると男たちは立ち去った。

同市の森林は1万8330ヘクタール。淀川水系の水源地で、大半が伐採が制限される「水土保全林」。三本木組合長は「後継者難で山を手放したい組合員もいるが、外資に渡ればトラブルになりかねない」と危惧する。

林野庁などによると、2006〜10年の外資の森林取得は北海道などで計40件、約620ヘクタール。取得者の住所地は中国(香港)の16件、租税回避地の「英領バージン諸島」の5件など。

国内の山林売買の実勢価格は1ヘクタールあたり数十万〜数百万円だが、水源地では大幅に上回る買収額がうわさされることも。外資の買収は、良質な日本の水を海外に持ち出して取引する「水ビジネス」が目的とみられる。民法上、地下水採取権は土地所有者にあり、自治体などが制限できない恐れもある。

このため、名水の地・大山山麓の鳥取県日南町は昨年12月、生活用水以外の地下水採取を許可・届け出制とする条例を制定。同町担当者は「名水の源流を持つ自治体には貴重な水を守る責任がある」と話す。

北海道と埼玉県では、森林取得を事前届け出制とする水源地保全の条例が4月に施行される見通しで、長野、群馬両県も条例制定を検討。北海道担当者は「外資の動きがわかれば、自治体が先手を打てる」とする。

国は昨年4月、森林法を改正し、森林を新たに所有する際の届け出を義務付けた。水源地保全の施策一元化などを定めた「水循環基本法案(仮称)」の議員提案の準備も進んでいる。

沖大幹・東京大学生産技術研究所教授(水資源学)の話「外資であれ国内資本であれ、地域の水源に害を与える行為があるならば自治体が規制すべきだ」

(2012年3月21日 読売新聞)