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[歩]なぜメガネをかけるのか?――「結果」の力が人を動かす

あなたはメガネをかけている、あるいはコンタクトレンズを使っているだろうか?そうだとしたらその理由は?「目が悪いから」は行動科学では第一の理由ではないとされ、この点に継続と習慣化のポイントがある。

■部下にアイデアをたくさん出してもらうには?

 あるメーカーでは、新商品開発のためのアイデアを定期的に社員から募っており、課ごとにまとめて提出する仕組みになっていました。

 A課長は、アイデア提出の時期が近づくと、いつも部下たちにこう指示しました。

「斬新なアイデアをできるだけたくさん出してくれ」

 そして、「まだか?」と急かしては、提出させます。それなのに、いつもあまり面白いアイデアは出されず、会社から採用されることはありませんでした。

 ところが、隣のB課では、注目を浴びるようなアイデアがたびたび出され、B課長が上層部から褒められています。

 焦ったA課長は、「もっと考えろ」と部下たちに要求するのですが、形ばかりのものが提出されるだけで相変わらず面白いものは出てきません。そもそも、部下たちは、積極的にアイデア出しをしようという気がないようです。

 さて、B課長は、A課長とどこが違っていたのでしょう?

「B課には優秀な部下が揃っているんだ」
 などと考えていたら、A課長はますます窮地に追い込まれます。そうではなくて、B課長は、「人が動く理由」をよくわかっていたのです。

■結果の力で部下を動かしたB課長

 B課長は、部下たちに「アイデアを出せ」と要求するのではなく、アイデアを持ってきた部下を大いに褒め、乗せることに徹していました。

「お、さっそく考えてくれたんだね。ありがとう」
「面白そうだね。このアイデアは、いつ思いついたの?」

 そのアイデアについて部下に質問し、コミュニケーションを深めていきました。

 課長が褒めてくれ、自分の存在意義を認めてくれるから、B課の部下たちは頼まれなくてもアイデアを考えるし、それをブラッシュアップしていけるのです。

 このことを行動科学マネジメントで検証すれば、A課長は「先行条件」で部下を動かそうとし、B課長は「結果」で部下を動かしていたということになります。

 どういうことか説明しましょう。

 人が行動するサイクルは、以下のようになります。人は先行条件によって行動し、その行動の結果が再び行動を呼び起こします。

 行動科学マネジメントでは、これを「ABCモデル」と呼んでいます。

A=Antecedent(先行条件)
B=Behavior(行動)
C=Consequence(結果)

 先行条件とは、行動のきっかけとなる目的や環境のことを指します。すなわち、A課長に「アイデアを出せ」と言われたことです。

 A課の部下たちは、「出せと言われたから出した」。つまり、先行条件があったから行動しました。そして、その行動の結果、A課長からは褒められることもなく、会社からアイデアを採用されることもありませんでした。

■先行条件のスローガンだけ掲げても、人は動かない

 一方、B課においてはどうだったか。もちろん、最初はB課長も「アイデアを出して」と言ったに違いないのですが、部下たちが行動を起こしたあとの結果を重視しました。

 部下たちにとって、「行動を起こしたら良いことがあった」という結果を課長自らつくりだしたので、部下は繰り返し行動してくれたのです。

 実は、人が行動を繰り返すとき、先行条件よりも結果の力のほうが大きいのです。一つの行動を起こした結果は、次の行動を起こすための強い先行条件となり得ます。

 たとえば、「お菓子をすすめられた」という先行条件があって、「食べる」という行動を取ったときのことを考えてみてください。その結果が「おいしかった」ならば、すすめられなくてもまたそれを食べるでしょう。「まずかった」ならば、すすめられても再び食べたいとは思わないでしょう。

 A課の部下たちにおいては、いつまでたっても「出せと言われたから」という先行条件しかないのですが、B課の部下たちにとっては「出せば褒められる」という良い結果があり、それによって行動が繰り返されているわけです。

 A課に限らず、どこの企業でもここが見落とされています。

「我が社の危機的状況を踏まえ、徹底したコスト管理を図ってくれ」
「売上三割アップを目指し、一人ひとりが積極性を発揮しよう」
 などと、先行条件のスローガンばかり掲げても、人は動かないということを覚えておいてください。

■良い行動を繰り返して習慣にする

 ABCモデルを理解したあなたは、部下の良い行動を誘発することができるようになります。そして、部下が良い行動を取ってくれるようになったら、次はそれを繰り返し、習慣化してもらわねばなりません。良い行動は気まぐれにやっても意味はなく、繰り返されてこそ安定した業績アップにつながります。

 それに、最初の数回は誰でも正しい行動が取れても、習慣化させないといつの間にかもとに戻ってしまいます。

 いまでは、車の助手席に座ったら、ほとんどの人が自然にシートベルトを締めます。やがて、後部座席でもシートベルト着用が当たり前になるでしょう。

 しかし、かつては、助手席はおろか運転席ですらなかなか徹底されませんでした。それが、法律で明確に義務づけられ、渋々ながらも繰り返しているうちに、いつの間にかみんな習慣化したのです。

 あなたは、部下に対して、良い行動を繰り返したくなるような仕組みをつくってあげなくてはなりません。

 シートベルトの場合は、「法律を守らなければ罰せられる」というネガティブな仕組みでしたが、あなたの仕事においては、できれば「渋々ながら」よりも「嬉々として」繰り返してもらえるポジティブな仕組みをつくる必要があります。

■メガネを「かけ続けている」理由は?

 ABCモデルで説明したように、人は「望ましい結果」が得られるとわかると、その行動を繰り返します。

 一つ質問しましょう。あなたはメガネをかけているでしょうか?かけているとしたらその理由はなんでしょうか?

「目が悪いから」というのは、先行条件ですが、おそらく一番の理由ではありません。毎日メガネを「かけ続けている」理由は、「メガネをかけるとよく見える」という結果を知っているからです。

 仕事においても、こうした「望ましい結果」を見せてあげることで、部下たちは良い行動を習慣化してくれるようになります。

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「先行条件」対「結果」かぁ…。
「結果」、大切やなぁ…。人にも自分にも。