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さわやかな面従腹背を演じたい−−塚越友子

2012年10月15日(月)(プレジデントオンライン)

面従腹背って言いますけど、そもそも相手に「合わせる」って考えていること自体、すでに相手が嫌な奴、という前提ですよね? もし気に入っている上司なら、合わせるって発想は出ないはずです。

人間というのは利己的なものです。自分の利益が最大限になるべく行動するよう、欲求づけられていると言われています。

社会心理学には社会的交換理論というものがあります。例えば、自分の利益を最大にしてくれた人がいるとします。すると「今度は自分がお返しをしよう」と考える“返報性”と、「この人は利益を与えてくれたから、いい人だし、好きだ」と考える“報酬性”が生じます。これらが連動すると、物事がうまくいくようになります。

だから、まずは上司の利己心を満たすこと。そうすれば、「この部下はいい奴だ」と思われたり、「少しはお返ししようか」と考えてもらえるようになるでしょう。

一見、回りくどいようにも見えますが、相手の利己心を満たしてやれば、ひいては自分の利己心も満たされるようになるんです。会社だって同じ。買い手の利益になるものを提供しなければ、会社は利益を上げられませんよね?

銀座のホステスも、「お客さまの満足のため」なんていう考えだけでは絶対にやってはいけません。

具体的な方法ですが、自分が一歩後ろからリードする気持ちになることです。例えば、やり方が違う上司に指示されたとき、まずはその方法を一旦受け入れてみましょう。「自分のやり方がいい」という気持ちが強いと、上司を真っ向から否定することになり、上司は気分のいいものではありません。

上司のやり方でやった結果、うまくいけばそれでいいですし、もしだめだったときのために、あらかじめリカバーする方法を考えておくんです。何か問題が生じたときに、その方法でさっと解決すれば、手柄にもなりますよね。上司の面子を保つこともできますし。

なかには、相手のやり方を受け入れること自体ストレスだと感じる人もいるかもしれません。でも、それは我が強すぎるから。はっきり言って、その我は社会において邪魔。我を通して成功している人はいません。松下幸之助氏や本田宗一郎氏だって、自分が有名になりたくて会社を興したのではなく、まず「灯りがあったらいいな」「速い車があったらいいな」という気持ちがあってのこと。

なのに、みんな自分のやりたいことが先に出ちゃうんですよ。私には「自己啓発書を読んでいる人は、絶対に出世しない」って思っています。それは、自分を啓発するようなことにお金を投資しているからです。

■善悪の判断をせず常にニュートラ

もし自分が出世したかったら、まずは上司を出世させること。さらにその上の上司が出世できるところまで考えたプランを立て、下からリードするんです。やがて上司が出世すれば、自分も引き上げてもらえます。そこまで計算できるかどうかであって、決して上司への服従ではありません。

人間って、どこに焦点を置くかで、ある出来事がとても辛いことにも、楽しいことにもなります。善悪の判断があまりにも強すぎる人は、服従しているっていう感覚になりがちです。

例えば雨が降ったとします。「雨だから嫌だな」と思う人は、「雨は嫌なもの」という前提がある。一方、「雨だからって引きこもらないで何かしましょう!」と言う人も、雨が悪いものだと思っているから、いい意味付けをしようとしているだけ。

実際のところ、雨は雨にすぎません。このように、変に善悪の判断をしないようにトレーニングすれば、心をいつもニュートラルに保てるようになるはずです。

仕事や人間関係で何かが起こっても、中庸な自分があれば、感情的な反応をしなくなります。もししたとしても、「今、感情的になっているな」と気づくはずです。

感情的な反応の根本は、好きか嫌いなんです。ましてや仕事でしたら、好きか嫌いかではなく、すぐに中庸なスタンスに切り替えられるようになったほうがいいです。

まず、上司に「合わせる」という発想は嫌だという前提をなくすべきでしょう。異質なものの中から自分も成長できますし、視野を広げることにもつながります。