5月病の時期も過ぎ、ようやく落ち着いてきたという新社会人も多いのではないでしょうか。そこできょうご紹介したいのが、『新社会人のための成功の教科書』(ジェフ・ケラー著、弓場隆訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)。アメリカで絶大な支持を受ける自己啓発の専門家が、自分自身の経験を軸に、仕事への取り組み方、人間関係の築き方、人生を豊かなものにする方法などを著した書籍です。

 

人生がうまくいかないとき、不平を言ったり他人のせいにしたりするのはとても簡単です。しかし、そんなことをしているかぎり、いつまでたってもうまくいきませんし、ずっと不幸な思いをしつづけるはめになります。自分の幸せと成功に責任を持ちましょう。成果をあげるためには、考え方を変え、話し方を変え、行動を変える必要があります。あなたはそれをすることができるはずです。(「読者のみなさんへ」より)


「Lesson 2 ポジティブな思考と感情を選ぶ」から、いくつかを引き出してみましょう。

自分の思考に意識を向ける


朝、目が覚めたときにどういう思考を選んだか? この問いに対して、「ベッドから起きて朝食をとり、電車に乗って通勤しただけです。いつもと同じで、特に思考を選んだわけではありません」と答える人は決して珍しくないでしょう。そして、それを想定したうえで、著者は自分自身が選んだ思考を紹介しています。

 

ベッドから起きたとき、今日も一日、健康で過ごせることを素晴らしく思った。(中略)それから約20分、勇気と元気が湧いてくる本を読んでポジティブな心の持ち方の大きさを確認し、オフィスに向かいながら「今日も一日がんばろう」と思った。(41ページより)


つまり著者が強調したいのは、「私たちは自分が思っている以上に、自分の思考をコントロールする大きな力を持っている」ということ。見落としがちではあるけれども、自分の思考に意識を向けることは、成功への道を歩むうえで不可欠な習慣なのだと結論づけています。(40ページより)


自分の能力を信じる


人生の成功は、心の持ち方から始まるもの。楽観的になって自分の能力を信じれば、成功する可能性が高くなるということです。逆に、悲観的になって自分の能力を疑うなら、あまり大きな成功は望めないだろうと著者はいいます。そして、ここに引用されているのが、フォード・モーターの創始者であるヘンリー・フォードのことば。

 

「できると思おうと、できないと思おうと、どちらも正しい」(42ページより)


思考は現実をつくり出すものだからこそ、自分の思考を注意深く選ぶ必要があるということ。もしもネガティブなことばかりを考えていたとしたら、それは失敗と落胆につながるだけ。だから、「なにごともポジティブに考えましょう」と、著者は促しています。(42ページより)


ポジティブな思考を選ぶ


著者によれば、ほとんどの人は自分の思考を選ぶ力を活用していないのだそうです。そして自分の心のなかに注入するものを意識的に選ばないのなら、心はこれまでと同じような思考を続けるだけ。それは、頻繁に開くホームページのアドレスを入力するとき、最初の2、3文字を入力するだけで自動的にアドレスが出てくるパソコンの標準設定のようなものだといいます。

同じ原理が思考にも当てはまり、つまり朝起きると、ふだんの設定どおりに思考が展開する。ネガティブに考える習慣があるなら、心は1日中ネガティブな思考を自動的に呼び出すことになるということ。

著者のことばを借りるなら、思考が現実をつくり出すというのは真理。したがって、思考は注意深く選ぶ必要がある。ポジティブな思考をすれば、ポジティブな結果を得やすいのに対し、ネガティブな思考をすれば、ネガティブな結果を招く恐れがあるということ。それなら、わざわざネガティブな思考を選ぶ必要はないわけです。(44ページより)


ネガティブな思考を断ち切る


ネガティブにものごとを考えても、なんの意味もないということですが、ネガティブなことが数多く起こっているのにポジティブな思考をするというのは、それほど簡単ではないでしょう。しかし、ネガティブなことがたくさん起こっているからといって、さらにネガティブな思考を続ければ、事態は好転するというものでもないはず。

ネガティブな思考が役立つのは、精神的に落ち込みたいときや、一緒にいて気分が滅入るような人間になりたいときだけ(もちろん著者は、皮肉としてこう書いているにすぎません)。だからこそ、ネガティブな思考を続けたところでなんの役にも立たないということを肝に銘じておく必要があるといいます。(46ページより)


ポジティブなことばを使う


自己啓発書は、日ごろ使っていることばの重要性を力説します」と著者は主張しています。なぜなら、ことばは非常に強い力を持っているから。自分自身が日ごろ使っていることばは信念を強化し、やがてそれが現実をつくり出すということ。

事実、成功者は自分に対しても周囲の人に対しても、いつもポジティブなことばを使うものだといいます。だからこそ、仕事で成功したいなら、世のなかにチャンスがいくらでも転がっているような話をし、そのチャンスをつかむ方法を考えるべき。著者は記しています。そうすれば、実際にチャンスをつかみ、ますます大きな成功をおさめることができるとも。

私生活が充実している人は、ポジティブなことばを使うもの。それに対し、たとえば恋愛がうまくいかない人は、「いい相手が見つからない」と愚痴をこぼすもの。皮肉なことにそれが、いい相手が見つからないという現実をつくり出しているという考え方です。

つまり、ことばは非常に強い力を持っているということ。だから、自分が日ごろ使っていることばを軽んじてはいけないと著者はいいます。ことばが現実をつくり出すという認識に立ち、ことばを使うようにすべき。豊かさ、繁栄、希望、愛、チャンスを強調することばを使えば、やがて心はそういう現実をつくり出すことになるといいます。(48ページより)


目標達成を信じて行動する


では、ポジティブな思考だけでポジティブな結果が得られるのでしょうか? 当然のことながら、思考だけでは結果を得ることはできません。つまり、行動を起こして目標を達成するまで、粘り強く努力を続けて初めて、ポジティブな結果が得られるということ。

つまり、ポジティブな思考は目標達成の出発点。「自分は目標を達成できる」と信じれば、成功するまで自信を持って前進し続けることができるというわけです。

 

大成功をおさめたいなら、自分の人生に起こってほしくないことではなく、起こってほしいことを考える訓練が不可欠です。(55ページより)


たとえば、「ダメかもしれない」とおびえながら商品のプレゼンテーションをするのではなく、「必ず成功する」という自信を持ってプレゼンテーションをし、双方にとって有益な契約を結ぶことを考えるべきだということ。(54ページより)

 


難しいことが書かれているわけではありません。それどころか、文章はとてもシンプル。しかも、1項目1見開きなので読みやすいはずです。気分転換をしたいときなどにページをめくってみれば、忘れかけていたことを再認識できるかもしれません。