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第一印象は声が4割! 効果絶大な「“声”の6技術」

2014年10月20日(月)08:23
PRESIDENT Online スペシャル 掲載

印象は声が4割?

せっかく話しているのに、誰も話を聞いていなかった。そんな苦い経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれない。「楽しみにしていました!」と言った人が、後ろのほうで寝てしまったのは、お疲れだったのか、話がつまらないからか……。ほかにも大きな要因があるようだ――。

“内容”とともに“伝え方”も大事なのは、前回(http://president.jp/articles/-/13597)もラリー・スミス氏の話し方からお伝えしたが、その主なポイントは“情熱”だった。今回は人間の体が持つ優れた道具箱から 「のど」というすごい楽器をとりだしてみる。声は人に影響を与える際に大きな武器の一つとして生かせるが、その実、私たちは使いこなしていないことが多い。ここを巧く活用することで、話す力を高めることができるという。

音の専門家であるジュリアン・トレジャーがTEDで語ったのは「力強く話す」ためのポイントである。まずは、人が話を聞いてくれないときに、ほんの少し発声を変えるだけでも話に耳を傾けてもらえるようになるという、その内容を参考にしてみたい。

心理学でも「印象の4割は声によるもの」との説もある。以前にもご紹介したアルバート・メラビンは、特定の条件下での実験結果から、人が受ける印象は視覚が55%、聴覚が38%、言語が7%としている(解釈に関しては第10回(http://president.jp/articles/-/9681)を参照のこと)。一定レベルまでは、声を改善するだけでもずっと印象が上がっていくようだ。

上手に使いこなせば、交渉などの成果に大きく影響するという声の活用術では、次のような点を意識することになる。

交渉に効果大! 声の6技術

プロポーズや交渉事など、あらゆる“説得”に影響が見られるのは、声域、声の質感、韻律(プロソディー)、ペース、音高(ピッチ)、声量、この6つの道具だとトレジャー氏は語る。

「声域」:<深さ=力・権力>

声の高さの範囲といったもの。鼻から声をぬくときと、のどから声を出すときでは、声の質が変わってくる。たいていはのどのあたりから声を出すが、さらに重厚感を出したいなら胸より下から声をだす。実は、私たちは声の深さを力や権力と結びつけるため、低い声の政治家に投票する傾向にあるという。

「声色」:<豊か、なめらか、温かみ=好感>

声の質感のこと。研究によると、豊かで、なめらかで、温かみのある声が好まれる傾向にある。イメージとしてはホット・チョコレートのような感じ。訓練で上達できるもので、息遣いや姿勢を学ぶだけでも見違えるように声質を改善できる。必要があれば、ボイストレーナーなどに頼るのも手だ。

「韻律(プロソディー)」:<抑揚、言葉に意味を添えるメタ言語

会話の醍醐味といえる部分。“ずっと同じ調子で話されると聞く気が起きない”のは、韻律がないために変化が乏しく、ポイントがつかみにくいから。たとえば意見を言う時に、まるで疑問文のように文末が上がる話し方をするなど区別がなくなると、本来は韻律だけでも伝わるニュアンスがわかりにくくなり、意思疎通を図りにくくなる。

「ペース」 :<速い=興奮した印象、その中でゆっくりすると強調になる>

速く話すと興奮した印象になり、その中で一部ゆっくり話すことで強調できるようになる。また、隙間を「えーと」とか「あー」で埋めるよりも、むしろ沈黙したほうが効果的に“間”を作り出せる。

「音高(ピッチ)」:<声の高低=意味、ニュアンスを変える>

感情の高ぶりはピッチとテンポで表現できる。同じ一言「カギをどこに置いた? 」「僕のカギをどこに置いたんだよ?」と 音高を変えるだけでも、違う意味になる。

「声量」:<声の大きさ=印象を変え、ポイントを示す>

声量によって興奮した印象を与えたり、静かに話したりすることで注意を引きつけたりできる。声量をうまくコントロールすることで、話をより印象的にし、話のポイントを示すことも可能になる。

以上のポイントを上手に使い分けることでより話に盛り上がりが出てくる。たとえば選挙では、こうした声が候補者を選ぶ要素のひとつになっているという。次に、ちょっとおもしろい実験結果をみてみよう。

声の「信頼度を勝ち取る」ピッチ

マイアミ大学の政治学者ケイシー・ クロフスタッド氏らは、「声に含まれるシグナルを分析すると、どの候補者が選ばれるかが部分的ながら説明できるようになる」としている。

氏らの実験では、架空の選挙で誰に投票したくなるか調査を行った。被験者は男性37名、女性46名の大学生で、候補者役はあわせて4人。男女各1人ずつ声が高い人と低い人を含むようになっており、それぞれが「私に投票を」と語りかけ、有権者が判断した。また、通りすがりの成人男性105人、女性105人に対しても聞き取り調査を行っている。

その結果、男女とも声が低い人のほうが、得票率が20%高い結果となった。また、女性候補同士の比較では、声が低い候補者が能力や強さで勝るイメージで、より信頼がおける印象を与えたという。一方で、男性候補の比較ではさほど違いは現れなかったが、それでも声の低い候補が好まれる結果になり、「声のピッチは、女性候補者のほうがより当落結果に影響があるようだ」としている。

また米デューク大学の生物学科の研究者らが行った実験では、「11月は私に1票を」と呼びかける声を録音し、さまざまなトーンにデジタル調節して被験者に聞かせ、その声からどの候補者に投票するかを聞き、声に表れた「能力・適性」「信頼性」などの特徴も評価した。その結果、「候補者選びは、印象に左右されることが多い」「声の印象は、有権者が考慮するポイントのひとつとなる可能性がある」としている。

選挙での候補者の印象を決めるひとつの要因が“声”であり、有権者はその声に信頼度や能力を見出している。私たちの日常でも生物学的にみて、低い声にはより信頼をおく傾向がみられるようだ。

さて、トレジャー氏は、話をする前のエクササイズとして、両手をあげて深く息を吸って「あー」と吐き出すこと、それから唇を軽く合わせてブルルルルとしたり、バババババと言ったり、ららら、ルルルと舌を震わせるなどの運動を行うことを勧めている。発声をよくするだけで、選挙のように信頼を勝ち取る可能性が高まるという。

こうした訓練も含め、先に示した声を上手に使いこなすことで、人前でのプレゼンから選挙まで、あらゆる“説得”の成果が高まるのである。

 

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渋くて、ホットチョコレートのような声がほしい。