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能力の高い人ほど「ここ一番」で失敗しやすい:その原因と対策

ライフハッカー[日本版]2014年10月2日(木)08:10

能力の高い人ほど「ここ一番」で失敗しやすい:その原因と対策
(ライフハッカー[日本版])


超一流のアスリートやアーティストが、「ここ一番」という時に実力を発揮できないのを、あなたも目撃したことがありますね。胃がキュッとなったり頭が真っ白になったりするあの感じは、自分でも経験がある人も少なくないでしょう。そうなったら、プロのバスケットボール選手でも簡単なフリースローを外したりするし、一般人なら重要なプレゼンの最中に、会議室で汗だくになったりするのです。どんなに実力のある人でも、プレッシャーの下では萎縮するものです。

経験や、すぐれた才能をうまくコントロールするスキルがあれば、そんな状況でも成果を出せそうに思えます。今の地位にたどり着くまでに積み重ねてきた努力も、起死回生の一発につながりそうなものです。ところが実際には、そうした卓越した能力こそが、大事な局面での失敗をもたらしているのです。

一流の人なら、プレッシャーをコントロールする力も十分に備えていそうなものです。ところが、不思議なパラドックスですが、トップクラスの人ほど萎縮しやすいようなのです。

プレッシャーを感じている時、脳の中で何が起こっているのか

 


プレッシャーによる萎縮を考える上でまず知っておきたいのは、その際に頭の中で何が起こっているか、です。

「ここは絶対に決めなきゃ」というストレスがかかると、自意識過剰になりがち。心配や不安や恐怖心から、脳は自己批判をはじめます。それが行きすぎると、集中が破壊の力に変わります。自分の一挙手一投足に注意を払いすぎるあまり、何度も練習して自然に身についている動きを妨げてしまうのです。

こうした思考は、脳のワーキングメモリをいっぱいにし、容量の限られている頭の中を埋めつくしてしまいます。脳のワーキングメモリは、私たちが考えて動く上で基本的な役割を果たすもの。複雑な短期記憶システムで、論理的思考や計算に使われます。

 

(脳のワーキングメモリの)活動中は、目前のタスクに直接関係する限られた量の情報をキープする一方で、周囲からの刺激や無関係な思いつきによって気が散るのを防ぎます。タスクへの集中を維持するワーキングメモリのはたらきが攪乱されると、パフォーマンスに悪影響が出ることがあります。


脳のワーキングメモリも、コンピューターのメモリと同様、限りあるリソースです。「うまくやらなきゃ」というプレッシャーのかかる場面で、不安や心配のつけいる隙を与えてしまうと、メンタルの大事なリソースをそちらに取られてしまいます。本来ならもっと良い使い方があるはずのリソースを消耗し、自分の一挙手一投足について考え込んでしまうのです。


プレッシャーがあると、強みを活かせなくなる


上に引用したのは、シカゴ大学の心理学者シアン・バイロック氏の、プレッシャーによる萎縮に関する研究の一節です。この研究では、能力の高い優秀な人ほど、プレッシャーによる萎縮を感じやすいとわかりました。そうした人は高度なパフォーマンスが当たり前である一方で、「高い認識能力を備えているために(中略)考えすぎ、分析してしまいがち」なのです。

この研究では、被験者にワーキングメモリの処理能力をはかるテストを受けてもらい、成績によって2つのグループに分けました。その後、被験者には2種類の条件下で、数学の問題(易しいものと難しいものと両方)を解いてもらいました。1つ目の条件は「プレッシャーの軽い時」で、被験者には練習だと説明して問題を解いてもらいました。もう1つの条件は「プレッシャーのきつい時」。実社会での外的要因によるプレッシャーを再現するため、金銭的報酬を約束し、共同作業や第三者の評価というプレッシャーをかけました。

ワーキングメモリの処理能力の高い(HWM)被験者群は、処理能力の低い(LWM)被験者群に比べて注意力がすぐれているはずなのに、プレッシャーのきつい条件下では、その能力が十分に発揮されませんでした。それどころか、論文のまとめによれば「プレッシャーの軽い条件下で難しい問題を解く際には、HWMグループはLWMグループよりも優位であったが、(プレッシャーがきつい場合は)その差は完全になくなった」そうです。

普通ならばすぐれたパフォーマンスをあげられる人が、その強みを失ってしまったのです。


プレッシャーにどう対処するか

おかしな話ですが、メンタルの手綱をゆるめ、あえてコントロールを手放すことこそ、コントロールを取り戻すのに有効なのだそうです。バイロック氏は「何千回も繰り返してきた活動なら、『自動操縦モード』のほうが良いのです」と説明しています。

不安感でメンタルの容量がいっぱいいっぱいになってしまいそうなら、以下の3つの方法を試してみましょう。普段の流れを取り戻し、ベストの方法を思い出して実行する役に立つはずです。


1. 一に練習、二に練習

これまで数えきれないほどの時間を費やして、才能を伸ばしてきたはずです。でも、ストレスのきつい時にもその才能を発揮するための練習には、どれくらい時間を使いましたか?

バイロック氏によれば「軽いストレスをかけて練習するだけでも、いざ深刻なストレスがかかった時に萎縮するのを防げる」のだそうです。弁護士が法廷での弁論を同僚の前で練習するのも、受験対策として時間制限をかけて予想問題を解くのも、ミュージシャンがステージ上でリハーサルをするのも、全部そのためです。「練習気分」を脱するための練習なのです。


2. 不安を書き出す

バイロック氏はまた、パフォーマンスに関する不安を書き出すよう勧めています。これにはワーキングメモリを空っぽにする効果があり、考えすぎで混乱するのを防いでくれます。例えば、不安に苛まれている学生を対象に、テストの前に不安な点を書き出させたところ、成績がB-からB+へと2段階アップしたのだとか。


3. 注意をそらす

注意を少しそらしてみるのも、考えすぎを防ぐ役に立ちます。ゲン担ぎに決まったソックスをはくとか、舞台に上がる前に耳をこするといった、迷信じみた「おまじないの類も、プレッシャーのきついタスクの前に意識を別のことに向ける効果があります。バイロック氏によると、歌を歌ったり数字を逆から数えたりするのも、内なる自己批判の声に溺れそうになった時には、気持ちを楽にする効果があるそうです(ただし歌手の方や、プレッシャーのかかる状況で数学の問題を解かなくてはならない時は、別の方法で気を紛らわせてくださいね)。

およそどんな分野であれ、パフォーマンスの大部分を占めるのはメンタルの駆け引きです。これを頭に置いて、駆け引きのコツを理解しておけば、ほかに勝る大きな強みになります。

「きついプレッシャーが刺激になってパフォーマンスが向上する」という思い込みは根深くて、うっかりするとその罠にはまってしまいます。でも、バイロック氏の研究などから証明されているように、これは必ずしも事実ではありません。努力や我慢も、すぐれた技術を獲得するために当然必要な要素ではありますが、それだけでは不十分です。目前のタスクに集中しすぎて、苦労して身につけた自信を失いそうになった時に、「今は自分を信じて、流れに身を任せた方が良い」と判断できる力も身につけておきましょう。

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別に能力高くないですが、一般人にも言える事。