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恋人探し求め?恋敵に敗れ遁走?…大阪に初めて現われた野生ツキノワグマの行き場はなく

 
2014.7.18 07:00 
イノシシ捕獲用のおりにかかったツキノワグマ。大阪でクマが出没したのは初めてとされるが、このクマは「恋人レース」に敗れて群を追放され、逃げてきたのではないかとの見方もあるという=大阪府豊能町(府猟友会豊能支部提供)

イノシシ捕獲用のおりにかかったツキノワグマ。大阪でクマが出没したのは初めてとされるが、このクマは「恋人レース」に敗れて群を追放され、逃げてきたのではないかとの見方もあるという=大阪府豊能町(府猟友会豊能支部提供)

 大阪にクマ初出没-。京都府と府境を接し、大阪府北部に位置する豊能町の山中で6月、ツキノワグマが捕獲された。常々、大阪にはツキノワグマは生息していないといわれていただけに、関係者は驚いた。専門家は「繁殖相手をめぐる争いに敗れ、故郷を追放された可能性がある」と指摘するが、出現した理由は謎だ。幸い人間に危害を加えることはなく、事態は収拾に向かうかと思われたが、新たな問題が発生した。クマの受け入れ先だ。大阪府は当初、野生のツキノワグマの生息実態がある近隣府県での放獣(ほうじゅう)を検討したが、難色を示され断念。さらに100カ所近くの全国の動物園、クマ牧場にも受け入れを求めたが、施設に余裕がないことなどを理由に交渉は難航し、殺処分の可能性も消えていない。

 

「やっぱり野生は怖い」

 

 「何か入ったな」

 6月19日午前、豊能町野間口の山中。府猟友会豊能支部会員の渡部克彦さん(69)は、以前から仕掛けていた有害鳥獣捕獲用のおり(高さ約1メートル)の扉が下りていることに気付いた。獲物がおりに入ると、勝手に扉が閉じるカラクリになっているのだ。

 期待が膨らむ一方、遠くから見えたのは、イノシシでもシカでもない黒っぽい生物。おりまで10メートルを切ったところで、目に飛び込んできたのは手足の鋭い爪と、どこか愛嬌(あいきょう)を感じさせる顔だった。

 「クマや!」

 驚いた渡部さんはすぐに豊能町役場に連絡。自らは様子を見守った。

 ツキノワグマは当初、おとなしく座っていたというが、渡部さんが近づくとおりに激しくぶつかり、威嚇とみられる行動を繰り返した。しばらく時間がたつと、今度は転がったり、寝そべったりするしぐさも。胸部の三日月形の白い模様も確認できたという。

 昼過ぎには、駆けつけた府動物愛護畜産課の獣医師により麻酔で眠らされたが、渡部さんは「クマは動物園やテレビでしか見たことがなかった。やっぱり野生は怖い」。

 

「危険」「病気が心配」

 ツキノワグマは推定4~5歳の成獣の雄で、体長1・34メートル、体重51・5キロ。大阪にはツキノワグマが生息していないとされており、府内で捕獲されたのは初めてとみられる。

 もともと、豊能町はクマを有害鳥獣にしておらず、もちろん捕獲することも想定していなかった。このため、府は鳥獣保護法の精神にのっとり、誤って捕獲したとして自然に帰すことを決めたのだが、一筋縄ではいかなかった。

 「大阪はツキノワグマが生息しないとされ、生息実績のない府内では生きていけない可能性がある。また、大阪は山と民家の距離も近く、人と接触する危険もある」

 こうした理由から、府は府内でツキノワグマを放つ手段を排除。実際にツキノワグマの生息実績がある京都府兵庫県の山中で放獣することを模索したが、「基本的に放獣先は捕獲された市町村」「(クマという)動物が動物だけに、どこでも放てるものではない。住民感情にも配慮しなくてはいけない」などと、やんわり断られた。

 それでは、と考えられたのが動物園やクマ牧場への引き渡しだが、こちらも施設のキャパシティーの問題や、野生だっただけに何らかの病気を持っているかもしれないという心配があるとして、断られている。

 

1カ月近く、うろつく?

 

 「安住の地」が見つからないツキノワグマ。対応が苦慮されるのは、生息していないとされる大阪で捕獲されたことが一因だ。では、なぜツキノワグマは大阪に出没したのか。

 6~7月はツキノワグマの繁殖期といい、大阪府動物愛護畜産課は「繁殖の相手を求めて、生息地の京都府などから移動してきたのではないか」と推測する。

 豊能町の東には大阪府茨木市があるが、同市北西部で5月上旬、クマとみられる足跡が発見されていた。茨木市京都府と接している。京都の山間部からやってきて、1カ月近く豊能町茨木市などの大阪府北西部の山中をうろついていた可能性があるのだという。

 一方、野生動物の生態に詳しい近畿大先端技術総合研究所の宮下実教授(野生動物医学)は「ライバルの雄との雌をめぐる争いに敗れたクマではないか」と分析する。

 宮下教授によると、ライバルに敗れた動物の運命は過酷だが、繁殖期はとくに悲惨で、執拗(しつよう)な攻撃で心身ともに深い傷を負うだけでなく、生息地から“追放”されることもある。

 その上、ツキノワグマの嗅覚は非常に敏感で、雌やライバルの存在は鼻で判別するといい、宮下教授は「繁殖相手を探すために、大阪のような非生息地域に現れるというのは考えにくい。やはり、同じクマがいない方向へ逃げようとしていたのではないか」とみている。

 

「殺処分しないで」メールも

 

 ツキノワグマの捕獲後、大阪府は、ドラム缶のような、クマ専用の筒状の縦長のおりを京都府からレンタルし、豊能町内のある施設に設置して保護。筒状なのは、誤って体を傷つけないようにするためといい、鉄格子のおりでは爪を引っかけてはがれてしまうなどの恐れもあるのだとか。1日2回、おりに空けられた穴からハチミツと水を与えられていたといい、町の担当者は「ネコのように体が柔軟で、狭いところでも自由に動いていた。健康状態に問題はなく、後は受け入れ先だけ」と話す。ただ、クマは現在、より広い一般的なおりに移したという。

 府はツキノワグマの今後について、放獣や、保護の受け入れ先を探すといった方法を最優先とする方針は変えていない。しかし、最悪の場合、殺処分するという選択肢も消えていない。

 一連の騒動が報道された後、ツキノワグマを哀れに思ったのか、「殺さないで」「早く放してあげて」と、助命嘆願の電話やメールが1日に数件、動物愛護畜産課に寄せられるようになったという。

 

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やはりいたようです。

で、放すってどこへ?

放した先で人を襲う可能性もある。気楽に放すって言えないよな…。