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生態系を壊す「侵略的外来種」 でも駆除すべきは…

産経新聞 9月13日(木)

大阪のある公立博物館の事務室で研究員としゃべっていると、地元の子供たちが血相を変えて飛び込んできた。カメの卵を見付けたというのである。

子供たちを連れて外へ出ていった研究員に後で聞くと、その卵はミシシッピアカミミガメ、通称ミドリガメのもので、侵略的外来種として指定されているという。もともとペットとして輸入されたものが繁殖しているのだ。

通常、こうした外来生物の卵は、見付け次第つぶして繁殖を防ぐのが普通だ。しかしこの研究員は、子供たちを連れて卵を見付けた場所へ行き、埋め戻したという。「低学年の小学生に卵をつぶさせるというのは、やはり抵抗があって」と悩ましげに語る。

こうした場合の対処は、2つに分かれるという。小さな子供であっても、外来種の繁殖は生態系を壊す恐れがあるということをきっちりと教えるために、卵をつぶしたり捨てたりする場合と、この研究員のように対応する場合だそうだ。「現実を教える必要はあるけれど、幼い子には命の大切さも教えたいしね」と話す。

外来種が天敵のいない異郷の生態系の中で大繁殖して、その土地の固有種を駆逐してしまう現象は、いまや世界中で問題となっている。琵琶湖がブラックバスブルーギルで悩み、日本産のイタドリは英国を悩ませている、という具合で枚挙にいとまがない。

しかしブラックバスは釣って食べようといった活動が展開される半面、キャッチ・アンド・リリースを旨とするスポーツフィッシングの愛好者からは異論が出る。外来種の駆除もそう簡単ではない。

一方で、環境の微妙なバランスの中で生きてきた固有種を保護する機運は国内でも盛り上がっている。すでにニホンアシカニホンオオカミもその姿はない。ついに8月29日には環境省ニホンカワウソが絶滅したと認定した。これ以上生態系を壊せば、いつかは人間にも影響が出て報いが来る。

ところが保護ばかりでも問題はある。現在国内各地では野生のシカやイノシシが増加して、里山の農作物被害は甚大だ。少し山へ入ると、こうした動物の血を吸うヤマヒルやダニなども激増し、人間も襲われる始末だ。環境のアンバランスさは深刻度を増している。

外来種の駆除と同時に、環境や野生生物と人間の共生を真剣に考えない人間優先、経済優先という、今も根強い社会の意識を駆除する必要性も高まっている。