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デキる人は「3週間分の悩み」を1時間で解消する

デキる人は「3週間分の悩み」を1時間で解消する

PRESIDENT Online スペシャル 掲載

 

■落ち込みやすい人、落ち込みにくい人の差とは

AさんとBさんは、クレーム対応を受けるコールセンターで働いています。

Aさんは、クレームを受けるととてもショックを受けます。

「こんな商品売っているなんてどういうつもりだ。その対応はなんだ」

などと言われるとがっくり落ち込むのです。自分が否定されたような気がして平日はストレスでいっぱいです。

一方、Bさんは、同じクレームを受けても仕事が終わったらスッキリと気持ちを切り替えることができます。

この違いは何から生まれるのでしょうか?

モノの考え方、受け止め方が違うのは言うまでもないのですが、もう少し心理学的に解説をしたいと思います。

 

■物事の「受け止め方」は変えられる

神経言語プログラミングの世界に、ニューロロジカルレベルという概念があります。これは、人が物事をどのように受け止めるか、その深さを知る上でとても分かりやすい概念です。大きく5つのレベルがあります。一番下から順に、環境、行動、能力、価値観、自己認識です。少し解説をしましょう。

 

【ニューロロジカルレベル】

レベル1. 環境:自分の周りの人やツール、道具、仕組みやルール
レベル2. 行動:戦略や行動の質・量
レベル3. 能力:自分のスキルの有無、スキルの高低
レベル4. 価値観:物事に対する意識レベルや考え方
レベル5. 自己認識:あなたの人間性や人格、生まれつきの特性
(レベルの数字が上がるごとに、自分自身の「根幹」にかかわる部分となり、インパクトも大になる)

実は、出来事や問題が起きた時にどのレベルで捉えているかで落ち込み度合いは変わります。

先ほどのAさんの話でいうと、「また怒られた。自分はオペレーターとして他の先輩と違ってうまく対応できない。ダメだなー」と考えています。「自分はダメだ」という自己認識レベル(レベル5)にまで突き刺さってくるのです。

一方、Bさんは、あくまで商品に対する不満をお客様は言っているのである、と自分と商品を切り離して考えています。そういう意味では環境レベル(レベル1)で捉えていると言ってもいいでしょう。悩みやすい人は、何でも、「自分は○○に向いていない」「自分はダメだ」「自分は自信がない」という自己認識にあらゆる出来事をつなげ、自分を責めます。

しかし、Aさんの例と同じようにあくまで商品の問題やクレーム処理の能力であれば、スキルを身につければいいのです。「私はクレーム対応能力を高める必要がある」と捉えるのと「私はオペレーターに向いていない」と捉えるのとでは随分と違います。

 

■必要以上に物事を深刻に捉えない方法

このニューロロジカルレベルという概念を知っておけば、出来事をどのレベルで捉えるか、どのレベルの問題か区別することができます。

たとえば、外国人との会話でうまく単語が出てこない、話しが通じずイライラされたときに「私は英語の才能がない」と悩む人は結構いるものです。この時、心理的なダメージがとても大きいのですが、忘れてはいけないことは、英語は単なる言語であり、習熟可能なスキルにすぎないということ。スキルの次元で捉えていれば、自己認識レベルに波及しません。

また、「私は段取りが悪い」と口癖のように言う人がいます。段取りが悪いと何度も言われると「私=段取りが悪い人」という公式ができ、自己認識レベルでショックを受けているのです。自己認識のレベルは自分の根幹に関わる部分なので、とてもインパクトが大きいです。

問題や悩みは、行動やスキルレベル(レベル3程度)で考えるのがいいのです。

■上司に責められ……悩み解決ドキュメント

今度は、上司に怒られたCさんの悩みを解決してみましょう。対話形式でご紹介します。

Cさん:上司に営業成績が悪いことを会議で責められてしまって……。それで、気分が落ち込んで、もう3週間あまり営業への意欲が落ちているんです。
古川:何と言われて怒られたのですか?
Cさん:「君は、昨年も営業目標は未達成だった! 今年こそは何とかしてもらわないと困る」って。みんなが見ている前で怒られたんです。

古川:Cさんは今それを聞いてどのように感じているのですか?
Cさん:私には営業の才能がないのだと思っていて、それで落ち込んでいるのです。
古川:ちなみに営業成績は入社以来ずっと低いのですか?
Cさん:いいえ、昨年と今年が連続未達成なんです。
古川:それまではどうだったのですか?
Cさん:はい、中の上ぐらいの成績で、5年前は営業部で3位になったことで表彰されました。
古川:営業で表彰される人がなぜ営業の才能がないと悩むのですか?
Cさん:う〜ん。あのときは運が良かったこともあったのです。
古川:ただ、この10年で2年だけ連続して未達成なだけなんですよね? 予算達成率は80%ということで認識は合っていますか?
Cさん:まあ、そうです。
古川:ここ2年は、これまでと何が違うのですか?
Cさん:大きな顧客が3社、後輩の営業に移管されました。その減少分を上司は、新規顧客の開拓によりカバーすることを期待しているのですが、それがうまくいっていないのです。
古川:では顧客環境が変わったのですね。整理すると、未達成になった原因は2つ。1つは大口顧客3社が後輩に移管されたことで受注額が減ったという環境の問題と、2つ目は新規開拓営業がうまくいっていないということですね。

 

■3週間も続いた悩みが1時間で解決

【解説】

ここで整理されたのは、顧客が移管されたという営業環境の変化が1つあったということです。もちろん、新規開拓営業をして埋めて欲しいという上司からの期待があったのでそれに応える必要はあります。

しかし、この事実をとって「才能がない」ということにはなりません。少し状況の整理をしたことで、本人も自分は才能がないといった次元では考えず、新規開拓営業がうまく進んでいないということに焦点を当てはじめます。

そして、問題は、新規開拓営業のための必要な行動が取れていないということです。つまり、行動レベルがうまくいっていないだけなのです。しかし、2年未達成が続き、上司に怒られると自己評価が下がり、私は営業としてだめなのではないかと前出のニューロロジカルレベルの自己認識レベル(レベル5)で捉えて、落ち込んでいました。

3週間続くダメージは、自己認識からやってきます。行動レベル(レベル2)で捉えれば、結局のところ、「戦略を変えるか」「行動量を増やすか」となり、解決策は明確なので、たった1時間のうちに「悩む前に動こう」と前向きになることができるのです。その結果、振り返ってみると悩んでいたことさえ忘れてしまうほど心理的なストレスは軽減します。

このようにニューロロジカルレベルを下げて捉えれば随分と違います。

あなたがうまくいかないことを「行動・戦略」や「学習できるスキル」の次元(ニューロロジカルレベル1〜3)で、その問題点と解決策を考えてみてください。心理的なダメージは減少し、前向きに行動する意欲が湧いてくるでしょう。