どんな逆境に追い込まれたとしても、強い心を維持し、明るく前向きでいられる人がいます。そういう人が近くにいると、こちらも勇気づけられ、元気が湧いてくるもの。それに対し、そばにいるのが弱気でマイナス思考の人だと、不安や憂うつ感が相手から伝わり、心が疲れてしまいます。

問題は、まじめで勤勉な人ほど多くのストレスを感じ、未来に不安を抱き、不満やイライラを感じ、人によっては抑うつ傾向になってしまうということ。しかしその解決策として、『なぜ、一流の人は不安でも強気でいられるのか? 希望をつくるレジリエンス・トレーニング』(久世浩司著、SBクリエイティブ)の著者は次の3つの力を身につければいいとしています。

1.逆境に負けない「レジリエンス
2.不安定な状況でも、見通しが立つ力「ウェイパワー」
3.困難があっても、最後までやり遂げる意思の力「ウィルパワー」
(「はじめに」より)

これらは、一流といわれる人であれば必ず持っていると著者はいいます。どんな状況でも強気でいられる人材に変わるためには、この3つを高める決心をし、これらを鍛える習慣をつければいいとも。でも、そのひとつひとつはどのようなものなのでしょうか?

逆境でも強気でいられる「レジリエンス」とは?


レジリエンスとは、「逆境や困難、強いストレスに直面したときに適応する精神力と心理的プロセス」と定義されるのだそうです。いわば、「逆境力」というべき力。心が折れやすい人が増えている社会においてはレジリエンスが重要であると考えられており、その力が発揮されるまでにはおもに3つの段階があるのだとか。

1.ストレスや失敗、逆境後に精神を深く落ち込ませない「底打ち」
2.落ち込んだ気持ちをスムーズに元の状態に回復させる「立ちなおり」
3.困難を乗り越えた経験を振り返り、意味を学ぶ「教訓化」
(33ページより)

では、これらをどう乗り越えればいいのか? まず「底打ち」の時点で重要なのは、ネガティブ思考をその日のうちに断ち切る習慣をつけることだと著者は主張しています。活力に満ちた1日を迎える秘訣は朝の目ざめの質にかかっているため、ネガティブ感情を断ち切るためのアクションを行ない、気持ちをリセットして安眠・熟睡態勢を確保する習慣をつけるということ。


「立ちなおり」について意識すべきは、気持ちの立ちなおりを加速させる精神的な筋肉というべき「レジリエンス・マッスル」を鍛える習慣。そして3つ目は、多忙な毎日でも時折り立ち止まり、振り返りの時間を持つ習慣。これらの習慣がレジリエンスを高め、ハードワークでの心の疲労を防いでくれるのだということです。そしてそれは、逆境に直面しても強気でいられるように変わるための秘訣でもあるのだといいます。(18ページより)


「ウェイパワー」で目標への道筋をつくる

ウェイパワーは、ゴールに到達するための道筋を考える思考の力。「見通し力」といい換えることもでき、つまり見通しが強まれば、より高い希望を持って前進できるというわけです。ウェイパワーを鍛えるには、普段の仕事で次の3つの方法を訓練すべきだと著者。

1. 目標設定と細分化:目標を持つだけでなく、遠くのゴールまでの「道しるべ」を設定すること。

2. 障害予測:目標達成の道では、思い通りにいかないこともあるもの。ポジティブなことだけを考えるのではなく、事前に困難を予測して失敗のリスクを下げることもまた大切だということです。

3. 見通しのシミュレーション:文字どおり、見通しをビジュアルで思考すること。
(以上91ページより)


ウェイパワーが目標に到達するための道筋を考える思考力であるなら、見通しが広がれば、高い希望を持って前進することが可能になるはずです。ゴールまでの道筋を複数持つことが、達成の可能性を高めるということ。

しかしウェイパワーを強くするには、目標設定をする習慣を持つことが大切。特に目的を見失うと、意欲とやりがいが減退するリスクがあるので注意が必要だと著者は記しています。

加えて大切なのは、見通しを立てるうえで楽観的になりすぎず、「逆境予測」をすること。すべてが予想どおりにうまくいって楽観視すると「ポジティブ幻想」の罠にはまることがあるので、目標を立てて細分化したあとは、「うまくいかない可能性」やリスクの予測を事前に行ない、その問題を乗り越える複数の道筋を考えるべきだという考え方です。(90ページより)


目標達成に効く力「ウィルパワー」

不安でも強気でいられる希望力を高めるために重要なのが、仕事を通じてウィルパワー(Will Power)を鍛えること。ウィルパワーの高さは、学校での成績、仕事でのリーダーシップ、収入レベル、結婚相手との関係性や心身の健康、そしてレジリエンスとも相関関係があるといわれているのだとか。

逆にウィルパワーが弱ってしまうと、自制心が発揮できず、過食や過飲、暴力やギャンブルなどのネガティブな行為に走りやすくなるのだそうです。つまりウィルパワーは、目標に向けてなにかを成し遂げる前向きな力だけではなく、目標までの道筋にある「誘惑」に負けない自己コントロール力も含まれているということ。

そしてウィルパワーを強化するためには、筋肉を鍛えるのと同じように、訓練すること、そして休息をとって回復させることのバランスが大切。そのコツとなる3つの方法は、次のとおりだそうです。

1.小さな挑戦を2週間実行すること
2.スポーツや運動を行なう習慣を持つこと
3.充分な睡眠をとること
(170ページより)


こうした小さな試みが、大きな意思力の違いを生み出すということです。(150ページより)

 

本書ではさらに詳しく、これらのトレーニングについて解説がなされています。そのどれもが実践的で、しかも難しくはないなので、結果的には不安を希望に置き換えることができるかもしれません。