さんぽ

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現状にしがみつかず、あえて負け続けることに耐える勇気

2014.11.17 小さな組織の未来学 より

 

梅原 大吾

勝ち続ける方法論

世界的人気の格闘ゲームストリートファイターシリーズ」の最新作、「ウルトラストリートファイターIV」の勝率で、僕は現在トップにいます(※編集部注:2014年8月末 取材時)。また、「最も長く賞金を稼いでいるゲーマー」としてギネスに記録認定されたことで、いつでも勝っている、勝ち続けているというイメージを持たれることがあるようですが、それは違います。

昔から僕は、新しいゲームが発売された直後、勝率がなかなか上がらないことが度々ありました。勝てないと周りの反応は冷めたいもので、面と向かって「梅原も大したことはない」「梅原は終わった」と言われたことは一度や二度ではありません。

しかし、負けたままでいたことはありません。勝つための条件を整えるために負ける必要があるから、負けが続く日々を受け入れるのです。

一般的に、一度勝てなくなると負けのスパイラルに陥り、ずるずると勝率を落としていくパターンが大半だと思います。では、そのような悪い流れから抜け出すためには、どうすればいいか。僕の場合はいったん、あえて負けることを受け入れることが経験上、一番有効な選択肢と考えています。

しかし、ここで注意しなければならないのが「負け」のスパイラルから抜け出せなくなること。そんな人たちに共通した特徴が、「小さな勝ちにすがり続けてしまう」ことです。大きく勝てないから、内容のない小さな勝ちでも拾おうとするのですが、それは小手先のごまかしに過ぎず、すぐに通用しなくなります。

勝てなくなった時、何が一番嫌なのかと言えば、「あいつ、急に負け始めたな」「出来ないやつになったな」というような、人の目なのではないでしょうか。ただ負ける、というだけでなく、その人の人間性まで否定されるため、これ以上落ちないように今の位置にしがみついてしまうのですが、実はそのポジションにすら残り続けられる保証はありません。

もし、独自の発想をしたいとか、自分にしかできない仕事をしたい、という風に思うなら、現状維持に使っているエネルギーは、自分の能力を高めるために使わなければなりません。しかし、それは勇気がいることです。みんな内心では、何か思い切ったことをしないとこれ以上の変化はないと思っている。ですが、手を出して失敗するのが怖いから、何もできなくなっている。

僕も、今までそういう状況は何度も経験してきました。最近は慣れてきたせいか、負けることはさほど気になりませんが、多くの人にとっては辛いことなんだろうなというのはよく分かります。

しかし現実的に考えて、ギリギリの場所にいつまでもしがみついていたら、今すぐではないにせよ、何年か先には必ず行き詰まりに陥ります。そうなれば、負ける側から永遠に抜け出せなくなる可能性が高くなってしまいます。それよりも未来のために、いずれ勝つ側に回るために、あえて負ける側へと足を踏み込むほうが賢い選択と言えるのではないでしょうか。