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成功への道、TEFCAS思考法とは?脳の成功指向メカニズムを支援する画期的なツール

脳の7つの法則の一つに「脳は成功指向のメカニズムである」があった。その成功を支援するツールとしてトニー・ブザンが考案したTEFCAS思考法を紹介する。マインドマップと併用すると、計画を立て目標を達成するのに非常に効果的に機能する。ここではとくに、現場のリーダーとして成功するためのツールとしての使い方に重点をおく。今回はその前篇。

■TEFCASとは?

 TEFCASは脳の思考を目標達成に向けて準備するプロセスである。TEFCASは目的を持ち、焦点を絞って意思疎通しあえる組織を築くための基礎となる。

 TEFCASはこの新しい成功法のステップを示す単語の頭文字をとった略語である。

Trial 試行
Event 実行(出来事)
Feedback フィードバック
Check チェック
Adjust 調整
Success 成功

 以下では各ステップについて説明し、現場の社員、マネジャー、経営幹部が正しいフィードバックを得て、互いに直接意思を疎通しあい、それが個人の目標であれ全社的な目標であれ、誰もが目標を達成するのを手助けするように使う方法を説明する。

 あなたの脳は無数の考えやアイディアを生み出す能力がある。その創造力のすべてを会社の目標とあなたの個人目標の達成のために使えたら何が起きるか想像してみよう。それはまさに、TEFCASを使うと起きることなのだ。

■最後のSから始める(Success)

 順番は逆になるが、TEFCASの最後のSからスタートしよう。SはSuccessの頭文字で、成功または目的や目標を意味する。それは、すべての努力が向かう先であり、それを達成するように計画されていることである。

 企業では社員全員が下支えしなければならない最優先課題を「ビッグS」として掲げる。これは、自社を差別化するために組織が定義した大きな成果を意味し、ビジョンと考えてもいい。重要なのは、「ビッグS」の中に現場の社員一人ひとりが個人のSの達成に役立つような部分を探す必要があることだ。

 あなたの成功、目標あるいは目的は、会社の売上を10%伸ばすこと、新製品の開発、もしくは部門の経費節減かもしれない。個人としての成功または目標は、昇進、あるいは家族と過ごす時間を増やすことかもしれない。各四半期にもそれぞれのSが存在し、年度が進むにつれて各四半期の結果が出る。ここでは、成功、目標、結果という言葉を同義に使う。

 なぜTEFCASの最後の要素であるSから始めるかといえば、成功の構成要素について明確なイメージを持つことで、この強力なツールが効果を発揮するからだ。

 旅を始める時に目的地についてぼんやりしたイメージしかないと、途中で多大な時間を無駄にすることになる。曲がる場所を間違え、間違った方向に進むことになりかねないし、ようやく到着しても、それに気づかないことさえあるだろう。同じようなことは、あなた自身、あなたのチーム、またはあなたの会社にとって成功とは何かについて、脳に明確なイメージを提供しない時にも起きる。具体的に定義するほど、その成功を達成するために脳が効果的に働く。

 目標達成に失敗する原因として最も一般的なのは目標に賛同を得ていないことである。これは目標の説明が不十分なことに端を発している。したがって、TEFCASを応用するための最初のステップは成功をできるだけ明確に定義することだ。

 脳は成功指向のメカニズム(脳の法則2)であり、成功と定義されたことが何であれ、それに向かって作用する。脳は何が成功かがわかれば、それに向かって絶え間なく働く。部下に仕事を割り当てる前にリーダーが最初にすべきなのは、成功とは何なのかを時間をかけて注意深く詳細に説明することだ。

 さらに、脳は成功指向のメカニズムであるだけでなく、真実を求める(脳の法則6)ことも忘れてはならない。したがって、目標は妥当なもの、達成が可能なものである必要がある。例えば、腕をパタパタと動かして飛ぶことを習得するという目標であれば、脳はそれは不可能であると認識し、そうするための方法を見つけようとする努力はしないだろう。

 目標は妥当であるだけでなく、あなたがそれについて情熱を持っていること、あなたが心底から達成したいことであるべきだ。Sに対するあなたの熱意が生半可だと、脳はそこに達するための半端な努力しかしない。障害にぶちあたると、その目標がなぜ非現実的であるかについて言い訳をして、そこに達しようとする試みをやめてしまう。

 したがって、達成したいと望んでいる目標に向けて、自分が本気で関わっているかどうかを吟味しなければならない。あなたにとってそれがなぜ重要なのだろうか。抵抗にあった時に、あなたはやめてしまうだろうか。それとも目標について十分な情熱を持っているから、どのような問題が生じたとしても解決策を工夫するだろうか。こうした質問への答えは目標に向かうことに対してどの程度の熱意があるかを理解するのに役立つ。

 この時点で、一度立ち止まって、目標への傾注度を考慮に入れて望ましい結果をより精緻に定義づけてもいいだろう。大脳の知的スキルと感情をブレンドするのである。

 あなたが本気で目標を達成するつもりであることを脳に確信させるには、あなたの成功を心に描いて、感じて、努力の結実を味わってみるとよい。あなたが目標を達成しているところをイメージしてみよう。仲間や上司との握手を感じてみよう。祝福の言葉を聴いてみよう。昇給額を計算してみたり、あなたが受け取る報酬を試算したりしてみよう。成功を祝う食事を味わってみよう。

 大脳皮質の機能、五感と情熱を合わせて使うと、成果に対しての情熱が生まれ、継続的に障害を克服できるようになる。

■試行、そしてすべてを試す(Trial、Try-alls)

 脳に明確な目標を与え、それが達成可能で熱心に全力を傾けられるものであれば、TEFCASのTのステップへと進むことになる。脳は一連の試行を通じてその目標を達成しようと試み始める。

 おそらくTEFCASのTはTrial(試行)のTよりもTry-alls(すべてを試してみる)のTと考えるとさらに有効だろう。あなたの目標に達するために、脳はすべてのことを試みるからだ。

 あなたは今、脳本来の創造性の驚異的な力を解放しようとしている。脳はあなたがどこに行きたいかを知っており、そこに到達する道を見つけるまで針路についてのアイディアを生み続ける。あなたは常に目標を踏まえて思考するようになる。あなたは史上最強の思考マシンを持っており、それは成功の達成に向けてあなたが辿るべき道をつくるために稼働している。

 脳の思考プロセスは絶え間なく続くので、あなたは24時間体制でパターンを生み出し、戦略を策定することができる。入浴中、運動中、通勤時の運転中、あるいは眠っている午前2時にも、考えやアイディアが生み出されるかもしれない。

 脳が自動操縦状態にある時、意見や判断の制約を受けない状態にある。そうした時に、脳の創造性が最大に発揮される。そして、あなたが目標を達成することに熱意を持ち続けていれば、脳は創造的な活動を根気よく続ける。

 脳が自動的に目標に達する最良の方法に取り組み続ける間、あなたは新しい情報を送り込むことによって積極的に手伝うことができる。ビジネス環境の中では、望ましい結果を既に達成した人を見つけることが、何でも試すTry-allを実行しやすくする方法の一つだ。そうすれば、脳が必要な行動やプロセスを真似ることができる(脳の法則3)。真似る法則をビジネス用語ではベンチマーキングという。

 幅広い知識と経験は、現場チームがそれまで考えたこともないようなことを試す素晴らしい機会を与える。経営チームは彼らを後押しして、障害にぶつかっても続けるように励ますことが重要だ。

■実行あるいは一連の出来事(Events)

 何でも試してみる過程では、活気づいてわくわくするだろう。あなたの脳は目標に到達する道を探そうとして数十、おそらくは数百のアイディアを生み出している。しかし、行動に移さなければアイディアはそれほど役立たない。

 TrialまたはTry-allのステップは計画の段階ともいえる。それに対し、イベントは実行、行動の段階だ。この行動によって一連の出来事が生じる。しかし、出来事は成功に向かう道の一つのステップにすぎず、唯一のステップではない。

 目標の達成に向けて最初に試みることがその答えであるという考えを持ってスタートすると、それが失敗したら失望することになる。そして、最初のステップではたいていの場合、定義された成功を手にできない。出来事は最終的な成功に向かう旅の一つのステップにすぎないことを受け入れれば、それがうまくいかなくても(それともうまくいっても)それほど重要ではない。

 目標に向かって前進しないイベント(出来事)はすべて失敗であると見る人は少なくない。彼らは失敗という認識を自分自身が失敗者であるという考えに発展させるが、こうした態度を取ると、さらに努力する意欲が失せるおそれがある。一方、すべての出来事は成功に導くプロセスの一部であると認識している人は、予想外の悪い結果も良い結果と同じように、おそらくはそれ以上に重要であると受け入れるだろう。

 忘れてはならないのは、「出来事」と「目標」は別物であることだ。これを取り違えると、一つの出来事が失敗すれば、すべては終わりという態度を取ってしまう。極めて少数の例外を除き、達成するための機会は一度ではなく、何度もある。

 その出来事が望んでいた結果にならなくても、目的を達成する助けとなるような新しい情報を学んだはずだ。それがどんな結果であろうと、出来事を「失敗」と分類すべきではない。

■フィードバックを与える時の注意(Feedback)

 出来事を評価するために、自分がどの程度うまくできたかについての情報、つまりフィードバックが必要だ。

 ある意味で、フィードバックがTEFCASの中で最も難しいステップである。フィードバックには悪いと認識されるものもあるからだ。誰しも、マイナスのフィードバックと思われるものは避けたいという自然な欲求がある。悪いニュースの伝え手を罰したい衝動は極めて一般的であり、大企業の役員室の多くでは特にそうである。

 しかし広い意味では、それが誠実で、成功について合意した定義から外れたイベント(出来事)を正確に指摘しているなら、悪いフィードバックなど存在しない。われわれに貴重な情報を提供してくれるので、すべてのフィードバックは良いものなのだ。

 良いフィードバックは積極的に求めて、奨励する必要がある。しかし、マネジャーとチーム・リーダーが成功するために聞く必要のあることではなく、自分たちの聞きたいことだけしか言わないようなゴマすり人間で周りを固めることが多すぎる。うまく行かなかったことについては誰も言いたがらないし、報告も期待されていない。それで、彼らは問題があってもごまかして言葉を濁し、取り繕おうとするのだ。

 フィードバックを求める経営幹部に誠意がないと、プロジェクトがうまく行っていないと告げた人を不当に批判したりする。悪いニュースを伝えるメッセンジャーを非難することは、本当に最悪の状態になるまで悪いニュースが上司に届かないことを確実にするだけだ。そして、その時にはもう遅すぎる。それよりも、マネジャーはメッセンジャーに見返りを与えるべきである。彼は成功への生命線を提供したのだから。

 フィードバックは一方向だけのプロセスではない。フィードバックを与えると同時に受ける用意がなければならない。フィードバックを与える時にも受け取る時にも同じルールがあてはまる。率直、具体的、そして目標に関連していることだ。

 フィードバックを受け取る人の目標に結びついたフィードバックを与えると、個人的で感情的な対立を回避できる。性格や人格の問題ではなく、取るべき行動や必要な調整が課題となるからだ。相手に対して「あなたは悪い人間だ」とは決して言っておらず、目標を達成するためには特定のものごとを他の方法で行う必要がある(Try-all、すなわち試行を調整する必要がある)と言っているだけである。

 フィードバックがないと、辿っている道が目標に続く道であると想定することしかできない。この場合、われわれは脳に生じた空白を推測と仮説で埋めるしかなくなる。真実を求めるフィードバックは成功するための生命線である。貴重なフィードバックは目標達成のために選んだ行動の効果測定を提供する。また、それは成功を収めるのに必要な今後の調整と、T(試行)に向けて計画するためのデータを提供する。

■フィードバックをチェックする(Check)

 フィードバックを受け取ったら、それが有効かつ正確かをチェックする必要がある。与えられたフィードバックが正確でない、あるいは不完全な場合、それに基づいて行動すると、あなたの成功への旅が危険にさらされる。このため、フィードバックを受け取ったら必ず、それに利点があるかどうかを判断するために査定すべきだ。フィードバックをチェックする最良の方法は、信頼できるとわかっている人からのフィードバックと比較してみることである。

 事務処理が遅いことが問題であると告げられた工場長が、このフィードバックをチェックしたいとしよう。彼は他の数名(同僚、部下、社内のほかの経営幹部)に、その評価に同意するかどうかを尋ねることができる。ただし、他の社員に尋ねる場合、そのフィードバックが誠実さを求めるものであるなら、相手があなたの望む答えをする義務があるように感じさせてはいけない。

 また、フィードバックをチェックし終わったら、それを受け入れなければならない。そのフィードバックが不正確であると認識すると、それはあなたの思考プロセスに悪い影響を与える。忘れてならないのは、脳は真実を求める(脳の法則6)ことだ。インプットされたことの誠実さを疑うと、脳はそれを捨て去る。

 フィードバックが事実に基づいており、関連性があって効果的かをチェックせずにやみくもにフィードバックを受け入れると、悪いインプットとなってあなたの目標から行動計画をそらす可能性がある。

 正確なフィードバックは貴重であり、われわれが目標に達するよう導く。受け取ったすべてのフィードバックはそれが正当で信頼に足るかを検証しよう。フィードバックのチェックが終了したら、成功に向けてもう一歩進むために、それを使って策定してあった行動計画を変更したり調整したりする。

■調整(Adjust)

 TEFCASのAはAdjust(調整)を意味する。これはS(成功)や目標達成に向かう道の最終ステップである。

 調整は正念場である。目標を定義し、あらゆる試行を検討してから実行し、フィードバックを受け取ってそれをチェックした上で、行動を調整するかどうか、そして調整する場合にはその方法を決めなければならない。この段階では、フィードバックが正確であると受け入れたら、目標を達成するために行動を調整し始める。

 この段階に達したら、T(試行)を調整したくないかもしれないし、やり方を変更するという考えに抵抗があるかもしれない。行動を修正する代わりに、「えーと、私は来年4月までに部門ディレクターになりたいとは望んでいなかったのだ。マネジャーのままで十分だ」と理屈をつけて、自分を正当化するかもしれない。

 そうなると、あなたはTの段階で何でも試してみるかわりに、成功の定義、すなわちあなたの目標を調整することになる。そうするのが適切なこともあるが、目標を変更せずにそれを頭に入れてあれば、あなたの脳は成功するまで新しいTを生み出して、それが様々な出来事を生じさせる。目標を達成するために必要な行動を調整し始めるのだ。

 こうして、TEFCASのプロセスを必要に応じて繰り返すことによって、定義した通りの成功を収め、あなたは成功を祝うことができるのだ。