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ノーベル賞確実、宇宙最大の謎「暗黒物質」解明へ  日本は先陣切れる

2014.1.7

 山深い岐阜県飛騨市神岡町にある鉱山跡地。地下1千メートルの坑道で、昨年秋に世界最先端のプロジェクトが動き出した。東大宇宙線研究所の「XMASS(エックスマス)実験」。目指すのは宇宙最大の謎とされる「暗黒物質」の検出だ。

 ダークマターとも呼ばれる暗黒物質は138億年前の宇宙誕生時から存在する重い物質で、今も宇宙を満たしている。だが光を出さず、地球も通り抜けてしまうため観測が極めて困難で、その正体は分かっていない。

暗黒物質の正体

 ノイズが少ない地下や宇宙で証拠をとらえたり、巨大な加速器で人工的に作ったりする実験が計画され、各国が発見を競っている。見つければノーベル賞は確実だ。東大カブリ数物連携宇宙研究機構の村山斉・機構長(49)は「2020年には正体が分かる可能性がある。そうなれば、すごいことだ。日本がその先陣を切る可能性がある」と話す。

 なぜすごいのか。実は宇宙に存在する物質のうち、人間や地球をつくっている普通の物質はわずか4・9%で、残りは正体不明。全体の26・8%を占める暗黒物質の謎が解ければ、宇宙や物質の成り立ちの解明が一気に進むからだ。

 宇宙の進化の道筋も見えてくる。初期宇宙では、暗黒物質の密度は場所によってわずかな差があり、密度が高く重力が大きい場所に普通の物質が引き寄せられ、銀河が生まれた。村山さんは「生みの親が分かれば、銀河や星、人間が生まれたストーリーができてくる」と期待する。

■100年前の予言証明

 暗黒物質の正体で最も有力なのは「超対称性理論」に基づく未知の素粒子だ。物質を構成する最小単位の素粒子は、昨年のノーベル物理学賞で話題になったヒッグス粒子を含め計17種類が見つかっている。だが超対称性理論によると、これらの粒子を鏡に映したような、少しだけ性質が違う別の仲間たちがどこかに存在するのだという。

 暗黒物質が潜んでいるらしい「鏡の中の世界」。その扉を開けることができれば、新たな物理学の広大な地平が見えてくる。宇宙や物質の概念が一変するのは間違いない。ただ宇宙全体の68・3%を占める暗黒エネルギーは、まだ解明の糸口さえ見つかっていない。

 村山さんによると、アインシュタインが約100年前に存在を予言した「重力波」も、2020年までに発見される可能性が大きい。ブラックホールなどの重い星が激しく動いたときに、その重力によって生じる空間のゆがみが、さざ波のように遠方へ伝わっていく現象だ。

 重力波によって、光や電波では観測できない「暗黒時代」の原始宇宙の様子が分かる可能性もある。日米欧で激しい競争が始まっており、見つかれば、これもノーベル賞は確実だ。