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理論と経験をバランスよく成長させよ:プロギャンブラーに聞く仕事術(4)

2014年9月21日(日)20:10  (ライフハッカー[日本版])

世界82カ国のべ250カ国でカジノをわたり歩き、ポーカーをはじめとする"ギャンブル"で17年間、安定的に生計を立ててきたプロギャンブラーののぶきさん。

その特異な経歴から企業の講演や書籍執筆の依頼が殺到しているのぶきさんに、シビアな勝負の世界に生きる彼ならではの仕事術をお聞きするこのシリーズ。最終回となる第4回目のテーマは目標設定と、自分の効率化についてです。

プロギャンブラーのぶき|blog|Facebook

1971年東京生まれ。バックパックひとつで世界のカジノを渡り歩き、"神の領域"といわれる「年間勝率9割」を達成したギャンブラー。2014年8月、初の著書となる『勝率9割の選択』(総合法令出版)を上梓。本書の中では、プロギャンブラーという特異な生き方、そして世界82カ国を旅した経験を活かして「勝ち続けるための選択術」「運をマネジメントする方法」「メンタルを強くする手段」などについて指南している。

■「死ぬまでにすることリスト」を作ろう


僕は、人生の主軸とはあくまで「自分」だと考えています。「人生」という言葉をWikipediaで調べると「生きている時間のこと」と出てきます。「生きている」っていうのは、自分の心臓が動いている間のことを指しますよね。自分の心臓って、親のため、嫁や子どものためなど、他の誰のためでもなく、まずは「自分」を生かすためだけに動いてます。ならば、ずっと自分のためだけに動き続けてくれる心臓にならって、自分の人生の主軸もまずは「自分」にしていくんです。

人生で「自分は何をするのか」を考える時、まずは「死ぬまでにすることリスト」略すると「夢リスト」を具体的に作ることです。ゴールがないとゴールできません。どう日々を動くべきかが見えてこないから、いま何をしていいのかも見えてこない。ここで重要なのが、さきほどの「人生の主軸は自分」です。いつか訪れる死の瞬間に、他人からのスタンディングオベーションを求めて生きるのではなく、自分から自分にスタンディングオベーションを贈れるように生きていくことなんです。それが「自分を生きる」ということです。世間体などにとらわれず、やりたいことに気付くたびに必ずメモし、リスト化してみてください。自分を生きる羅針盤「夢リスト」を創り上げていくんです。


■目標がない場合のスタート地点は?

ひとつめの目標が見えない時期も長いものです。そんなときは「最初の目標を見つけるのが、あなたの目標」です。夢という表現の目標だと大きくとらえがちですけど、もっと小さな目標から見つけようとするのが、スタート地点です。

たとえば、まずは世界の絶景写真集を見てください。その中から自分のベストを見つけて「死ぬまでに行く場所」を決めるのです。旅行や絶景に興味がなければ、ミシュランのレストランガイドから三ツ星の行きたいお店を探すのもお勧めです。僕は「オーロラを見る」と夢リストに入れました。ではオーロラを見るためにどうすればいいか、プランニングが始まるわけです。

どれぐらいお金や時間がかかるか? たとえば1週間かかるのであれば、1週間どうやって休みをとれるようにするか。また、どの国でオーロラを見るか。費用に30万円かかるなら、それをどうやって貯めるのか。そうやってひとつずつ、ゴール達成に必要なお金と時間をプランニングしていきます。

僕の場合、オーロラを見に行くという夢を「自分へのご褒美」と設定しました。仕事であるギャンブルで目標数値が達成できたらオーロラを見に行けるようにしたのです。「ニンジンぶら下げ、駆け続ける馬となれ」。ご褒美で自分のモチベーションを高く維持するのです。自分を最大限に稼働できるようにコントロールする環境設定を作り、勝率を上げていきます。

実のところ、1年目は目標に届かず行けませんでした。くやしかった。それからオーロラの写真をホテルの部屋中に貼り、意識し続けてがんばり続けました。そのおかげで翌年は達成。そして出かけた旅では、オーロラの見えない6日間だったけど、オーロラの地に立っただけで、感動でした。ビジネスにも集中できたし、あこがれの場所への夢も叶ったし、一石二鳥でした。


■がんばれた過去の「実力リスト」を作り、実力に相応の自信をもつ

自分を賭けていく上で大事なのが、「実力分の自信をもつ」ということです。ただ、そもそも自分の実力って正直よくわからないですよね。実力って結局、自分がするぞと決めた目標に対してどれほどがんばれたかという量だと考えてます。他人からの評価ではなく、過程における努力の量が重要なんです。他人からのオーダーで始めた仕事や勉強でも、自身でがんばれたことは実力にカウントされます。

今までに自分が「これはがんばれた」と感じるものをすべて書きだしてみてください。結果は運も左右するので、参考にすぎません。がんばれた過程への評価で「実力リスト」を構築していくのです。その実力リストを丸暗記し、自分の実力の把握に努めてください。自分はなにをどこまで努力できるのか? 自分のがんばり度合いとがんばれる方向性を把握できます。孫子の兵法「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」です。各自の夢リストが異なるのですから、敵とは実のところ自分の中にあると考えています。


■努力は遠回りしても必ず結果につながる

最初は金メダルに届かなくても、銅メダル止まりだったとしてもそれはそれでいいんです。僕の場合も、仕事としてのギャンブルへ死に物狂いでトライし続けて、ちょうど2年間修練したある日、お金を稼ぎ出せるようになり、カジノから初めて追い出されました。365日、毎日24時間努力しようが、必ずしも金メダルがとれるわけじゃない。でも、その時の自分のベストな結果として銅メダルが実力なのだと把握できるし、次は銀や金を目指せばいいことです。

たとえば僕は13年前、ギャンブルを極め、人生はギャンブルだと悟りました。そしてギャンブルの勝ち方から人生の勝ち方を解き明かすのに2年半も無収入で原稿を書きあげました。しかし出版社へ持ち込んでも反応はパッとしません。砂を噛むほうがまだマシなくやしさでした。出版社が出してくれないなら、オレが出せばいい。自分が命を賭けた人生の自信作なんだから、他人の判断に任せてたまるか! そう考えて、コピーして、本のような体裁に創り上げ、渋谷のハチ公の前で手売りしてみました。そのときに自分の考えをきっちりまとめる努力をしたことで、現在セミナーの依頼をいただいたときに、軽やかにトークできているわけです。

▲のぶきさんが手売りしていた自作の本3冊

■過信も謙遜も敗因になる。実力分をきっちり賭けよう

人生というギャンブルにおいては、常に過信も謙遜もしないで実力分を賭けてくことが大事です。自分の手持ちの実力が10だとしたら、5でも20でもなく、きっちり10を賭けていくということです。たとえば、謙遜して5ですと言ってしまうと、相手から5のレベルでしか見えず、実力の半分の仕事や収入しか得られません。自分の効率としては半減です。「自分という駒をどう動かせば最大の効果が得られるのか?」客観的視点で自分という駒を動かしてく意識も大切です。

逆に、10の実力なのに、20のことができますと言ってしまえば、前述の謙遜と比較できないほど最悪な破産へ向かいます。それが"運"というギャンブル性も入る現実社会において数学的見地から導き出された答えです。ビジネスで大事なのは、いっときだけ大成功させることではなく、勝ち続けて継続させること。いくら1億円稼いだとしても、1年後に破産していれば、それは勝ちではなく負けです。つまり、謙遜は非効率的で結果も半減し、過信は破産します。そのどちらでもなく、実力分の自信を賭けていくことが「人生という名のギャンブル」において最適な賭け金となり、最も高みへ昇れる方法だと思います。


■理論と経験をバランスよく成長させよ

ただ僕はどちらかといえば元来、行動が先走りがちな方なので、ときどき思い起こすようにしている言葉があります。孫子の「理論と経験をバランスよく成長させよ」というものです。この格言は実力を伸ばしていく選択基準として、最重要です。僕なりの経験則で述べると「理論×経験=実力」と掛け算でとらえるのが最適だと考えています。

たとえば、理論も経験も最高得点を10点とします。10点分の理論を勉強しても、経験が0点であれば、現場での実力はゼロです。逆に、経験だけを10点にしても、理論をまったく無視してルールもゴールも知らないのであれば、何をするかもわからないので現場では使えず、実力はゼロです。

でも、経験はたったの1点でも、理論を9点勉強した場合には、9×1=9点の実力になります。そして、そのベストが理論も経験もバランスよく成長させることです。バランスよく積み上げれば、5×5=25点の実力へ到達します。ポーカープロのような勝負の世界はとても厳しく、同じだけ努力の時間を費やしたとき、24点以下でも生き残れません。「今の自分は理論と経験において、どちらが欠けているのか?」この意識が実力を伸ばす上で大事です。

■連載:プロギャンブラーに聞く仕事術

勝つためには「レベル3の視点」で働け:プロギャンブラーに聞く仕事術(1)勝ちにこだわるな、勝つ準備にこだわれ:プロギャンブラーに聞く仕事術(2)モノへの所有欲から卒業すると、「勝ち方」が見えてくる:プロギャンブラーに聞く仕事術(3)