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熱波の原因は“人為的な気候変動”か

 

2014年9月30日19時44分ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト

熱波の原因は“人為的な気候変動”か
(Photograph by Jae C. Hong / AP)

 世界各地で熱波が観測された2013年だが、原因は人為的要因による気候変動にあるとする最新レポートが公表された。現在も続くカリフォルニア州の干ばつなど、熱波以外の異常気象についても取り上げられているが、気候変動との関連性については明確な結論は得られていない。

 アメリカ気象学会(American Meteorological Society)がまとめた特別レポート「Explaining Extreme Events of 2013 From a Climate Perspective(気候から読み解く特異な現象2013)」は、2013年に世界4大陸で 発生した16件の極端な現象についてその原因を検証。米英の専門家グループが個別に行った22例の分析結果が掲 載されている。 

 米国海洋大気庁(NOAA)国立気候データセンター(National Climate Data Center)所長のトーマス・R・カー ル(Thomas R. Karl)氏は記者会見で、「突発的な異変に関する学術的な研究は、異常気象の今後の予測や、気 候変動に人類が果たすべき役割を理解する上で極めて重要」と述べた。 

 またカール氏は、「非常に複雑な現象で、複数の要因が重なって発生する場合が多い」としたうえで、自然の 変動が影響しているケースも決して少なくないことを指摘した。 

 とはいえ、今回のレポートと過去2件のレポートから浮かび上がった実態を見るかぎり、気候に対する人為的な 影響と熱波との間に相関関係があることは明白で、「特に暴風と大雨が深刻さを増している」とカール氏は言 う。さらに、専門家は個々の現象の原因を慎重に見極める必要があると付け加えた。 

◆大雨の原因は? 

 2013年9月、アメリカ、コロラド州ボルダーの一帯が5日間の大雨と洪水に襲われ10人が死亡、被害総額は約 2200億円に上った。この現象は、気候変動を示す一例であるかのように見える。地球規模で大気温度が上昇する と大気中の水蒸気量が増加するため、異常な降雨が増えることになるからだ。 

 しかし、ボルダーにあるNOAAの研究所に在籍するマーティン・ホーリング(Martin Hoerling)氏らの研究グル ープが今回のレポートに発表した調査結果によると、コロラド州の北東部では状況が異なるという。同グループ は1つの気候モデルを基に、工業化以前の同地域の気候と、人為的な要因によって温暖化が進んだとされる現在の 気候を比較したところ、温暖化が異常な降雨の発生につながる確証は得られなかった。確かに1938年の9月には、 今回と極めてよく似た大雨の事例が確認されている。 

◆深刻化する熱波 

 レポートには、2013年にヨーロッパ、中国、韓国、日本、オーストラリアの5地域で発生した熱波についての調 査結果も掲載されているが、いずれもが「化石燃料の消費といった人為的要因がもたらす気候変動によって、異 常気象の深刻度や発生頻度は顕著に高まっている」と結論付けている。 

 中でもオーストラリアの熱波については、5つの研究グループが多様な分析手段で詳しい調査を個別に行ってい る。共同編集者の1人である英国気象庁ハドレーセンター(U.K. Met Office Hadley Centre)のピーター・スコ ット(Peter Scott)氏によれば、いずれも「注目に値する」結果が得られたという。 

人為的要因による気候変動がなければ、地球の大気温度がこれほど極端な数値を示すはずがないというのが彼 らの見解だ」とスコット氏は説明する。 

 一方、異常な大雨や雨不足に関しては、「現在、科学的な調査が進められている」とNOAAのホーリング氏は語 る。ただし、「明確な結論が得られるかどうかはわからない」という。

 共同編集者の1人でNOAAのホーリング氏の同僚ステファニー・ヘリング(Stephanie Herring)氏によると、降 雨は熱波に比べるとはるかに複雑な気象現象だという。降水量に影響を及ぼす要因は1つや2つではない。気温、 水の蒸発速度、土壌の水分量、積雪状態などに加えて、土地利用や利水などによる人為的な要因も重なる。 「実態はまだ見えてこない」とヘリング氏は話す。 

カリフォルニア州の干ばつと気候変動の関係 

 レポートには、今年で3年連続となるカリフォルニア州の干ばつについての研究結果も掲載されている。スタン フォード大学のダニエル・スウェイン(Daniel Swain)氏らの研究グループがまとめた論文によると、同州の干 ばつには、確かに気候変動による影響が見られるのだという。 

 主な原因とされているのが2013年1月以降、太平洋の北東部に停滞している高気圧の尾根だ。東からの風が遮ら れるため、カリフォルニア州に水をもたらす暴風雪も陸に到達できないのだという。 

 スタンフォード大学の研究グループは、現在と工業化以前の大気をモデル化し、高気圧の尾根が発生する確率 を評価した。すると、地球温暖化が進行している今の環境では確率が3倍に達することが判明した。 

 一方、NASAゴダード宇宙飛行センターのハイラン・ワン(Hailan Wang)氏とジークフリートシューベルト (Siegfried Schubert)氏がまとめた論文では、「2013年にカリフォルニア州の干ばつのリスクが高くなったの は、温暖化の傾向が長期間続いたためではない」と結論付けられている。 

 温暖化が進めば陸地への風を遮る高気圧の尾根が太平洋上で発生しやすくなることは確かだが、同時にカリフ ォルニア州沖合の大気中の湿度も高くなるため、陸地に降り注ぐ雨の量は増加するはずだというのが両氏の見解 だ。 

 この結論が正しいとすると、今なお続くカリフォルニア州の厳しい干ばつは主として、大気の自然変動がもた らした結果だと見なければならない。 

 NOAAのヘリング氏は、「干ばつと気候変動に関連性があるのかないのか。結論に至るまでには、相当な時間が 掛かる」と話している。 
 
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どちらにせよ、まだまだ困難な状況が続くことに変わりはない。
解決案はない。
 
いや、あるか。
人間が“今の”消費活動をやめれば…。