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さんぽ

環境関連、武術、その他、気になったことをつれづれに。

世界有数の森林資源を利用していない日本 スウェーデン、フィンランド、チリに学べば明るい未来が開ける

JBpress2013年11月19日(火)
 前回までに、太陽光、風力、地熱、潮汐そして水力などの再生可能エネルギーは電力(一部蒸気)しか生成しないこと、そして再生可能エネルギーの中でも、液体燃料を取り出せるバイオマスエネルギーが有望であるが、穀物の澱粉から作るバイオエタノールは食料と競合するため、 主流となり得ないことを述べた(「世界全体ではマイナーリーグ以下の原子力発電」参照)。

 木質資源を原料としたエタノールも製造可能であるが、熱量が低く、ガソリンの代替としかならない。それよりも、木質資源を原料としてガス化すれば、ディーゼルやジェット燃料を製造可能な(ガソリンも製造可能)バイオ燃料が製造可能となる。

 ガス化工程ではワックスも生成し、化学原料となる。欧米では以前よりこの種の開発に熱心であること、特に米国ではバイオ燃料の確保を安全保障として捉えていることについても述べた(「米国で急速に開発が進む木質バイオマス」参照)。

■豊かな森林資源を有効利用していない日本

 さて、日本でのバイオ燃料の可否を論じる前に、日本における森林産業について考える必要がある。

 製紙用の化学パルプを例に取る。化学パルプというのは簡単に言うと、木材中のセルロースと類似物質を取り出した製紙用原料である。それらは、木材中に約50%含まれる。

 残りの50%は主に木材を直立させるための接着剤のようなもので、リグニンと呼ばれている。リグニンを水と薬剤と熱を使って、木材から溶かし出すことを化学パルプ工程と言う。

 このリグニン成分を含んだ水溶液は、当然のことながら木材の成分であるから濃縮して燃やせる。このエネルギーで木材のパルプ化と薬品の回収をすべて賄えるのである。すなわち、石油は基本的に必要としない。

 蛇足ではあるが、製紙工場では多量の石炭と石油を使用するが、これは古紙を再生する工程などで使用する電気や蒸気を発生させるためである。従って、古紙を利用すればパルプ資源の削減になるが、一方で化石燃料を使うため、全体的な省資源の最適化についてはよく考える必要がある。

 木材と化学薬品と水があれば製造可能であることから、世界で製造されている製紙用パルプは化学パルプが最も多く、下の表のように約1億3000万トンである(FAOSTAT: 国際連合食糧農業機関[FAO]統計データベース)。

 2009年のリーマン・ショックで先進諸国の紙需要が減退したのに対し、近年、中国を含む新興国で板紙の需要が伸び、古紙パルプの使用が増えている。2008年では化学パルプと古紙パルプの割合は2対1であったが、2012年には1.6対1になった。

 さて、次の表のように、2012年の統計(FAOSTAT)によれば、日本の化学パルプの生産量は790万トンで世界第5位である。

 ちなみに、日本の紙・板紙の生産量は2595万トンで世界第3位である(1位中国:1億630万トン、2位米国:7553万トン)。 日本は印刷用紙への古紙の利用が進んでいるため、化学パルプの生産が世界で5位にもかかわらず、紙・板紙の生産は世界3位になっている。

 また、黄色で示した3カ国、スウェーデン、日本、フィンランドは森林面積が22万〜28万km2で、しかも国土に占める森林の割合が68〜73%とよく似ている。国土面積も同程度である。化学パルプの生産量も700万〜800万トンで同じレベルである。

 ところが、森林利用の中身は大きく異なる。スウェーデンフィンランドが使用する木材の70%近くを自国の森林資源で賄っているのに対し、日本は逆に70%を輸入している。

 日本の樹木は北海道のエゾマツ、トドマツを除いて、パルプ材として適さない樹木であるという理由もあるが、紙用途以外の建材でも同じように70%輸入に頼っている。

 表の中の国は概ね森林資源の輸出国なのである。すなわち、主としてコストが高いため使い道を見出せない樹木が、多く茂っているのが日本の山と言える。本来、山の木はきちっと手入れをしてやる方が、根を張り防災にも役立つ。この点からも本当は利用すべきなのだ。

■人件費が安くないのに森林産業が発達しているチリ

 下図は、人工衛星によりNASAが作成した森林分布図である。樹木の高さを要因に入れてあるため、木の育たない草原地帯は含まれていない。

 南米アマゾン川流域、アフリカ・コンゴ川流域、ボルネオ・インドネシアなどの熱帯雨林を別とすれば、北半球ではカナダ、米国、そしてユーラシア北部に森林分布が見られる。

 図の一部を拡大してみる。ロシアを中心に西はフィンランドスウェーデンまで東は沿海州から日本に至るまで緑地のベルトが続いている。ドイツ、フランスは国土の30%が森林であり、ほぼこの値が全世界の平均値である。

 つまるところ、日本は木の育つ土地であり、うまく活用する方策を見出せば、日本の樹木は有効利用可能なのである。

 その1つの可能性がバイオ燃料である。なぜなら、バイオ燃料はそれほど樹種を選ばないからである。しかし、現在のような日本の林業のあり方ではコストがかかりすぎる。

 世界の標準をチリを例に見てみよう。日本の資本も多く参加して植林から伐採そして日本への輸出を行っている。しかも、チリはアンデス山脈がせまる山がちな国土を持つ。

 森林面積は16万2000km2で、国土は南北に4600kmと日本とよく似ている。北部はアタカマ砂漠で雨は降らない。南部から森林地帯である。南北の気候差は大きい。海に沿って寒流のフンボルト海流が北上する。

 チリと言えば、ワインや養殖鮭でお馴染みである。あまり知られていないが、南米では唯一OECD経済協力開発機構)に加盟しており、国民1人当たりのGDP国内総生産)は約150万円で南米一である(日本450万円、韓国218万円、台湾195万円)。

 政治的にも民主化が進み安定している。国土が山がちなことや、人件費が比較的高いのにもかかわらず森林産業が発達している。

 チリの植林木の伐採の様子をビデオで見てみよう。ビデオに見える山並は、すべて植林木である。伐採は機械化されており、運搬作業も人力ではない。山の中まで道路を通している。このような風景は日本では見られない。チェンソーで刈るのが一般的だろう。

(ビデオは張れず) 

 日本でこのような作業風景を実現するには、どういった方策が必要であろうか。次回ではそれを考えてみたい。