さんぽ

環境関連、武術、その他、気になったことをつれづれに。

朝残業 −残業代ドロボーを退治する方法

PRESIDENT 2013年11月4日号 掲載

以前、払いすぎの残業代割増率を見直すことにより、残業代を減らす方法を取り上げた(「社長が残業代コストを減らす方法」 http://president.jp/articles/-/10548)。今回は、残業時間自体を減らす方法を中心に考えてみよう。

まず考えられるのが、社員が遅刻した場合の扱いだ。たとえば始業9時、終業18時、休憩1時間で実働8時間の会社があるとしよう。この会社で社員が1時間遅刻して、その日の19時まで働いたときに、素直に残業手当を払っている社長はいないだろうか。

じつは同じ日に限り、遅刻した時間と残業時間は相殺できる。そのため定時を過ぎた18〜19時の労働に対しては、残業手当を支払う必要はない。

遅刻時間と残業時間の相殺が可能なのは、法律で1日の労働時間は休憩時間を除いて8時間以内と定められているからだ(労働基準法32条)。遅刻して始業が後ろにずれても、休憩をはさんで8時間までは法定労働時間内。定時を過ぎていても時間外労働にはあたらないので、残業手当を支給しなくていい。

残業代を払いすぎているケースはまだある。たとえば社員が半日の有給休暇を取り、その日に残業をしたケースだ。社労士の和田栄氏は、こう指摘する。

「有休を取った午前中の3時間を労働時間とみなして、定時を過ぎた労働時間に時間外の割増賃金(割増率25%)を支払っている会社をよく見かけます。しかし、有休は労働時間にカウントされないため、午後13時から8時間プラス休憩1時間で、22時までの仕事なら時間外労働にならず、割り増しを払う必要はありません」

ただ、遅刻の場合と違って定時以降の労働時間を半休3時間と相殺できないため、定時以降の労働については所定の賃金を支払う必要がある。半日の有休を取った日に定時の3時間後まで働いた場合、時間単価1000円の賃金なら3000円の支払いが必要になる。要は、これまで時間外労働の割増賃金(25%)を払っていた会社は、割り増しなしの所定の額(100%)で済むようになるわけだ。

社員の遅刻や半日の有休取得は日常的ではなく、見直し効果は期待できないという社長には、実際残業している時間そのものを減らす方法をおすすめしたい。

上司に申請して許可されないと残業できない“残業許可制”を導入している企業があるが、運用には注意が必要だ。残業許可制は形骸化しやすく、上司が許可していないのに社員が勝手に残業するという状況に陥りやすい。そのときに社員から未払い残業代を請求されると厄介だ。会社としては「社員が勝手に残業した」と主張したいところだが、残業が常態化していれば会社が残業を黙認していたとみなされ、裁判でも会社側の主張が退けられるおそれがある。

それを踏まえて和田氏が提案するのは、始業前に限って残業を認める朝残業制だ。

「早朝出社を苦手とする社員は多く、自主的な残業は減るはず。残業したとしても、夜の残業と違って時間に制限があるので、だらだらと働くことはなくなり、無駄な残業は減るでしょう」

朝残業制は、すでに大企業でも採用されている。伊藤忠商事は今年10月から、22時以降翌朝5時までの深夜勤務を禁止して、朝5時から9時までの勤務に対して50%の割増賃金を支給する。朝型へのシフトを促すために割増率を高く設定しているが、朝にシフトすれば残業時間が短縮されることが予想される。残業代に悩む社長には参考になるはずだ。