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海洋温暖化のペース、過去1万年で最速

2013年11月1日 (ナショナルジオグラフィック)


フィジー、ベンガ島沖のシャークリーフで、サンゴ礁の海をを泳ぐ魚の群れ。 Photograph by Mattias Klum, National Geographic (ナショナルジオグラフィック)

 地球温暖化により生じた熱を、海洋がこれまで推測されていた以上に吸収している可能性があることが、インドネシア沖の海底堆積物をもとに算出した、過去1万年間の海水温の記録によって判明した。

 同時に、1950年以降、太平洋の海水温が上昇するペースが、それまでとの比較で15倍にまで速まっていることもわかった。

「通常の自然環境下では、海洋は気温の変化に対して緩衝材となるものだ。だが現在では、我々は完全に均衡から外れている」と、この研究の主著者で、ニュージャージー州にあるラトガース大学所属のヤイル・ローゼンタール(Yair Rosenthal)氏は述べている。

 海洋は地球温暖化により生じた過剰な熱のうち約90%を吸収すると考えられていることから、近年、海洋の熱吸収能力に注目が集まりつつある。

 過去100年間で、海面は全世界平均でおよそ18センチ上昇しているが、このほとんどは、海水が熱を吸収する中で起きる「熱膨張」によるものとみられている。

 今世紀のうちに、海面はこの熱膨張効果によりさらに61センチ上昇し、世界各地の海岸に影響を与えると予測されている。しかもこれには、氷河の融解による海面上昇は含まれていない。

◆海底の秘密

 今回の研究で、ローゼンタール氏をはじめとする研究チームは、有孔虫の分析を行った。有孔虫は殻を持つ小さな生物で、海底に堆積し、過去1万年間の海水温の状況を今に伝えている。

 この小さな単細胞生物の殻に含まれるマグネシウムとカルシウムの比率から、殻が形成された時点の海水温がわかる。そこで研究チームでは、この比率の変化を調べることで、過去の海水温の変動を把握した。

 研究チームは、インドネシア沖の2つの地点について、水深455〜920メートルの範囲で海底を調査。2つの調査地点は、はるか昔から太平洋の水が混ざってきた場所の典型として選ばれた。

 古気候の専門家で、コロラド州ボールダーにある米国海洋大気庁(NOAA)国立気候データセンターのデイビッド・アンダーソン(David Anderson)氏はこの研究について、複数の地点でさまざまな水深を調査した点で、過去の海水温に関する研究をさらに進歩させたものだと評価している。

「(海洋の)水深1000メートルまでの水域について、地球のエネルギーバランスの変化に伴う海水温の変化の様子を明かす研究は、どんなものであれ興味深い」とアンダーソン氏は述べた。

◆気候変動に連動する海水温の変化

 太古の有孔虫の殻を分析した結果、全体的に見て、およそ7000年前から中世に至る時期には、海水温が長期的に低下していたことが判明した。調査対象となった水深全域において、低下幅は摂氏2.7〜3.8度ほどの範囲にあった。

 殻の記録から、西暦1200年前後の温暖期に海水温が一時的に上昇したことを示す証拠も見つかった。さらにその後には、西暦1550〜1850年の間に訪れた小氷河期により、水温が下がっていた。

「今回の調査からわかったのは、海が地上の気温変化を吸収するには数十年の年月がかかるということだ」と、ローゼンタール氏は指摘している。「現在、温暖化が進んでいることは明らかだが、(海洋が)これまで考えられていた以上に(温暖化の)緩衝材として大きな役割を果たしている可能性が出てきた」。

「しかし、確信をもって断言する前に、我々はさらに海洋について理解を深める必要がある」と、ローゼンタール氏は釘を刺している。