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仕事の目標の見つけ方、計画の立て方

(プレジデントオンライン)PRESIDENT 2012年1月30日号 掲載

慶應義塾大学大学院特任准教授 ジョン・キムからのアドバイス

5年先の目標を決めるのはムダです。時代は激しく変化します。自分は5年先の時代を予測する能力を持っているのか。そう問うたとき、ほとんどの人は自分の無力さに気づくはずです。

年先の目標がムダだと考える理由はもう1つあります。それは、時代の変化以上に自分が大きく変化するからです。人は同じ自分をずっと生きるのではなく、瞬間ごとに生まれ変わります。明日の自分は今日の自分ではありません。にもかかわらず、現時点の根拠に乏しい推測で、未来の自分を縛るのはもったいない。5年先のことは未来の自分に決めさせればいい。そのときの自分はいまより飛躍的に成長しているはずだからです。いまの自分の判断能力を過大評価してはいけませんが、未来の自分の判断能力を過小評価してもいけないのです。

そうはいえ、計画は必要です。大切なのは、目標を設定する際に抽象度を持たせること。抽象度が高ければ、そのときどきに合わせて目標を修正していくこともできる。意思が弱いから目標を修正するのだと考える人もいますが、私はそう思いません。自分を取り巻く状況は日々変わるし、自分も瞬間ごとに変わるのですから、目標の修正はごく自然なことです。最初は自分を液体のようにしてすべてを包み込み、いざとなれば固体や気体になって進んでいくイメージです。

短期的には、具体性のある固有名詞の目標を設定してもいいと思います。ただその際には、富士山よりエベレストを目指すことです。目標が高かろうが低かろうが、それを100%達成することは難しく、たいていは目標値の7、8割のところに落ち着きます。だからこそ限りなく高い目標を立てて、自分に強い負荷をかける必要があるのです。

登山にたとえてみます。1000メートルの山を目指して頑張れば、半年後には700メートルや、800メートルの山に登ることができます。では、同じ人が2000メートルの山を目指したらどうか。目標を倍に設定して本気でそこに到達しようと思えば、おのずとトレーニングの量や内容、取り組む姿勢が変わってきます。トレーニングの濃度が倍になれば、半年後は1400メートルから1600メートル登れるようになっていてもおかしくありません。

未来の自分を過小評価するのはよくないと述べました。自分には無理と決めつけるのではなく、自分は潜在能力があり、高い目標設定がそれを顕在化させてくれると信じることです。その確信を持って、目一杯に高い目標を掲げます。

一番高い山を目指す一方で、誰も登ったことのない山を探すことも大切です。基礎体力をつけるためなら、ほかの人が登った高い山にチャレンジすることも大いに意味があります。しかし与えられた領域で頑張るだけでは、より創造性が求められるこれからの時代を切り拓いていくことはできません。自分が勝負する領域は、自ら選び、設定すべきなのです。

そうでなければ人生に何の意味があるでしょうか。いまの自分は不完全で修業中の身だとしても、そのプロセスを含めて、目標設定の全権は自分にある。そういう絶対不可侵領域としての自己を確立することが、自分の人生を生きるということなのだと思います。