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困難が辛くない練習

(プレジデントオンライン) PRESIDENT 2011年5月30日号 掲載

困難が目の前に立ちふさがったら、真っ先に何をすべきでしょうか。アメリカの経営学者シュトルツは、問題発生時の解決手順として「LEAD法」を提唱しました。

問題が起きたら、まず現状把握のために話を聞いて(Listen)、問題の所在を探り(Explore)、原因を分析して(Analyze)、対応策を実行する(Do)。この4ステップで対処することが理想的だというわけです。

ところが問題が大きかったり緊急だったりすると、多くの人は慌てて最終ステップの「Do」から入ろうとします。いきなり行動から入ると、情報収集や問題分析のステップを踏んでいないので、結局はどうしていいのかわからず、「どうしよう」と呆然としたり、パニックに陥ってしまう。これでは困難な事態がさらに悪化するだけです。

クレーム対応で説明するとわかりやすいでしょう。お客からクレームの電話がかかってきたら、まずは話を聞き、原因を分析すべきです。その結果いまやるべきことが見えてくれば、あとはベストを尽くすしかないという割り切りが可能です。ところがそれらのステップを飛ばして「とにかく謝りにいかないと」と考えると、先の展望が見えないので気が重くなる。頭では困難に立ち向かおうとしているのに、気分が滅入るのはそのためです。

困難を乗り越える意識は、「達成動機」とも深くかかわってきます。達成動機は物事を成し遂げようとする気持ちのことで、これが高いほど困難に対して怯まずに向かっていけます。

達成動機は、成功を体験して目標を達成する喜び(自己効力感)を味わうことによって高まっていきます。仕事の中で自己効力感を得ることが難しければ、趣味の分野でもいい。少し頑張れば手が届く資格に挑戦するなどして、成功体験を積み重ねていくことが、困難にくじけない心をつくります。

意外なところでは、「愚痴」の効果も見逃せません。カウンセリングの現場では、患者に自分のことをとにかく話してもらって問題点に気づかせる「おしゃべり療法」が功を奏すことがあります。これの応用で、困難で何もかも嫌になったら、誰かに聞き役になってもらい、とにかく話して頭の中を整理するのです。解決ではなく、頭の中を自分で整理することが目的ですから、あっさり解決策を与えてくれるような相手では逆効果になることもあります。むしろ何度も聞き直してくれるくらいの相手が理想です。

ただ、男性は女性に比べて腹を割って話すことが苦手かもしれません。ツイッターなどネット空間に愚痴をこぼしてもいいのですが、聞いてもらっている実感に乏しく、かえって空しさが募る恐れもあります。やはり奥さんや親友など、お互いに愚痴をこぼし合える相手を大事にすることが一番。困難から自分を救う鍵は、普段の身近な人間関係にあるのかもしれません。