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地球温暖化、最悪のシナリオが現実に?

2012年11月13日 (ナショナルジオグラフィック)

グアテマラの空を覆う雲。地球温暖化における雲の役割はほとんど解明されていない。

 巨大ハリケーン「サンディ」をきっかけに、多くの人々が気候変動を意識し始めている。いくつかの報告によれば、メキシコ湾流に乗ったハリケーンは暖かい海水によって勢力を増し、海面上昇が洪水を増幅させた可能性もあるという。

 最新の研究によれば、温暖化は既に進んでいるという。しかも今後の進展は、数ある予測の中でも高い値に沿う可能性が大きいと研究チームは結論づけている。

 アメリカ、コロラド州ボルダ―にある国立大気研究センター(NCAR)の大気科学者ジョン・ファスーロ(John Fasullo)氏とケビン・トレンバース(Kevin Trenberth)氏は、ある問題の答えを探すため、地球湿度のパターンを研究した。21世紀末の大気中で、二酸化炭素(CO2)濃度が予測通り現在の2倍になった場合、どれくらい暖かくなるかという問題だ。

 平衡気候感度とも言うCO2増加による気温の変化量は、2100年前後までに摂氏2.8度ほど上昇すると見積もられている。ただし、予測値はばらばらで、1.7度から4.4度まで倍以上の開きがある。

 この違いは無視できる差ではない。気温上昇の度合いが高いほど問題も拡大するためだ。海面上昇や異常気象といった災厄が増え、海洋循環も激変する。その結果、地上でも大きな変化が起きる。

◆雲が鍵を握る

 気候感度が1979年に初めて報告されてから、予測値の幅は全く狭まっていない。この謎を解明するため、ファスーロ氏とトレンバース氏は空に目を向けた。

 ファスーロ氏によれば、気温上昇の度合いを正確に予測する上で鍵を握るのは雲だという。雲は地球のエネルギー収支に大きな影響を及ぼす。まず、白い雲は日光を反射して地球を冷やす。大気中の高さによっては、毛布のような役割を果たし、熱を閉じ込める。

 しかし、雲は形や大きさ、明るさが目まぐるしく変わり、モデル化が難しい。人工衛星による観測は不完全で、誤差が生じる。ファスーロ氏とトレンバース氏はこれらの難題を回避するため、雲が生まれる仕組みに着目した。その環境は相対湿度が高く、水蒸気が豊富にある。

◆ドライゾーンの役割

 ファスーロ氏とトレンバース氏は、大気循環によって生まれるドライゾーンという範囲を研究の対象とした。

 雲が形成される対流圏のうち、高度1000メートル前後にあるドライゾーンは、未来の気候を決定づける上で主要な役割を果たす。北半球のドライゾーンは北緯10〜30度の亜熱帯にある。ベネズエラからアメリカ、フロリダ州の間だ。

 研究チームはドライゾーンの相対湿度の観測値を、気候変動に関する政府間パネルIPCC)による最新の研究で使われた16種類の気候変動モデルと比較した。

 その結果、相対湿度の観測値と最も一致していた3モデルはどれも、最も暖かい未来を予測している。21世紀末までの気温上昇は4.4度という値だ。最も不正確とされるモデルは、相対湿度の値を高く、気温上昇を低く予測していた。

 ファスーロ氏は次のように説明した。「目に例えると、ドライゾーンは気候システムの虹彩だ。暖かくなるにつれて、虹彩は広がる。つまり、空を覆う雲が減り、より多くの熱を取り込むことになる」。ドライゾーンの拡大が考慮されていないモデルは、観測データと一致していなかったとファスーロ氏は述べる。

 つまり、温暖化はどんどん進むという結論になる。

 今回の研究結果は、11月9日発行の「Science」誌に掲載されている。