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【第4回】どうしたら、科学的に「自信」をつけられるのか?

■自信の「定義」を考える

そもそも「自信」とは、どういうものだろうか?と考えるときがある。
つまり、「自信」の定義である。

いま、私が考える「自信」の定義は、

「無理」だろうと周囲から思われていることを「やれる」と言い、そしてまわりからは、この人なら「やるだろうな」「やるに違いない」と思われること、

と考える。

しかし、そのためには「歴史」が必要だ。
なんでもかんでも、「やれる」と言うことはできるが、「この人ならやるだろうな」と周囲に見せつけてきた過去、実績があるからこそ、周囲は信用するのだ。

「自信」があれば、自分を信用して未知なこともチャレンジできるし、周囲からも信用されているので、惜しみない協力を得ることも可能だろう。

ということは、「自信を持て。君ならできる」と言って、自信を持つことができるわけではないということだ。

「いま無理だと思うことをやれ。ちょっとぐらい無理をしろ」と言うことで、「自信」が徐々につけられていくものだ。
現時点で無理だと思うことを、どれくらいやり遂げたのか、その「歴史」が自信を芽生えさせてくれるのだ。

■「自信を持て」と言われて、持てるものではない

「自信」の持てない人に対し、

「自信を持て」
「意欲を持て」
「やる気を出せ」
「もっと努力しろ」
「失敗を恐れるな」
「チャレンジ精神を持っておもいきって行け」
「感謝の気持ちを持て」
「危機感を持て」
「当事者意識を持て」
「もっと考えろ」
「思いを持って仕事をしろ」
「自分から報・連・相をしろ」

という人は多い。

 しかし、自分の部下に対しても、コンサルティング先の社員に対しても、こうした発言を私は一切しない。
なぜなら、自信や意欲、感謝の気持ちは前述したとおり、「持て」と言われたからといって持てるものではないからだ。

たとえば、「感謝しろ」と言われて「わかりました」と答えても、本当の感謝の気持ちは湧いてこない。
せいぜい口先で「ありがとうございます」と言うのがいいところだ。
自信や意欲だって、人から「持て」と言われて湧いてくるなら誰も苦労しない。

こうした気持ちが湧いてくるのは、コラムの第2回で紹介した「あたりまえ状態(無意識的有能状態)」になってからである。

■絶対やらなくてはいけない「行動指標」

仕事には「行動指標」と「成果指標」という2つの指標がある。

行動指標というのは、できない理由がないもので、「期限」と「ノルマ」が設定される。

たとえば、2週間に1回開かれる会議の席で、「○○さんにアポイントを取っておいて」と言われたとする。
2週間後の会議で、「どうなった?」と尋ねられて、「やっていません」と答えたら、会議の参加者は全員、「そんなことはありえない」と思うだろう。

このように、行動指標というのは誰が見てもできない理由はないこと、努力次第で達成できること、社会人として絶対にやらなくてはいけないことを指す。

営業の訪問件数も行動指標の一つだし、見積書や会議資料の作成なども行動指標に相当する。

■“絶対達成”できるかわからない「成果指標」

一方、成果指標というのは、一所懸命にやったからといって必ずしも達成できるとはかぎらない指標だ。
たとえば、どんなに多くのお客様を訪問しても、目標予算が達成できるとはかぎらない。だから目標予算は成果指標ということになる。

行動指標と成果指標のうち、最初に達成するのは行動指標だ。
行動指標を達成し続けると、多くの場合は意欲が湧いてくるはずだ。
いままではできなかったことを絶対にやりきるという経験を重ね、目標を達成するのはあたりまえだ、と思えるようになれば、達成感を味わうことができる。

それまで10時間の中で5回しかできなかったことが8回できるようになれば、「やってみるもんだな」と思うことだろう。
その姿を見ていた周囲の人たちだって、「ずいぶんがんばっているじゃないか。やればできるな」と評価し、努力を認めてくれるものだ。

そうして達成感を味わい、周囲の人たちから承認されることで、「もっとがんばろう」という意欲が湧いてくる。
それと同時に、作業も自然と効率化する。勉強も自発的にするようになるだろう。

そのように心底思えるようになるには、拙著新刊『絶対達成マインドのつくり方』に書いたとおり、目安として8か月くらいはかかるかもしれない。
しかし、それまでには過去にできないと思えたことも、意外とできるものだと受け止められるようになる。
ただし、行動指標を達成したとしても、必ずしも成果が出るというわけではない。自分で決めたことは「やりきる」という習慣が手に入る、ということだ。

実際に、やらなくてはいけないこと、できない理由がないことをきっちりやっていても、残念ながら成果が出るとはかぎらない。
たとえば、営業の場合、お客様の訪問件数という行動指標を達成していても、目標予算という成果指標を達成するとはかぎらない。
お客様の訪問件数に比例して売上が上がる保証はない。

■行動指標と成果指標の間には、大きなギャップが!

100%正しいプランは存在しない。
もし、そのような奇跡のプランが存在するのなら、誰も迷わないだろう。
そのプランを選択してやりきればいい。
そうすれば必ず目標は達成するし、夢は叶う。
しかし現実はそうではない。
だからこそ、どうすればやりきる習慣が手に入るのだろうかと多くの人は悩むのだ。
それをやりきったところで、期待した成果を手にできるかどうかわからないからだ。

このように、行動指標と成果指標の間には、大きなギャップがある。
では、成果指標を達成するためにはどうすればいいのか。
まずは自分で考えて、うまくいかない部分を改善するしかない。それでもうまくいかなければ上司や先輩に相談する。
こうして自分で考えるようになり、自然と報・連・相が生まれるわけだ。
コラムの第1回に書いたとおり、目標を「絶対達成」しようとするから、自分で考える体験が膨大な量となるし、人に相談する数も一気に増える。

そして何かを一所懸命にやっていると、周囲とのラポールが構築され、引き寄せの法則が働く。
いろいろな人から助けてもらったり、まったく関係のない人から協力を得られたりする。そうなって初めて、成果が出始めるのだ。
「本気」かどうかは関係がない。
本気じゃない人でも、目標を達成させられる人は山ほどいる。
単純に、達成させることが「あたりまえ」になっているかどうかだけなのだ。

■根拠のない自信は逆効果になる!?

アメリカで行われたある実験に関して、次のような話を教えてくれた人がいた。
AとBの2つのグループに試験を受けさせる際、Aグループには「試験に向けた対策をしてきなさい」とだけ声をかけ、Bグループには「試験に向けた対策をしてきなさい。君たちはできるから大丈夫だ」と自信をつけさせるような声がけをしたところ、Aグループはいままでと変わらない結果を出したけれども、Bグループの試験結果は前よりも悪くなったというのだ。

この実験の結果から想像できるのは、根拠のない自信をつけられたBグループが楽観的になり、いままでどおりの試験対策をしなかったということ。
根拠のない自信は逆効果であるということが読み取れるだろう。

 この話を聞いて、私も「そうだろうな」と納得する。
私たちコンサルタントもクライアントであるお客様に対して、「大丈夫。きっとできますから、自信を持ってください」と言うことはある。
しかし、そのときは、彼らがいま、どのくらいのことができていて何が足りないのか、どのくらいのポテンシャルがあるのか、ということを明確にしたうえで、「あとこのくらいやらなくてはいけないから、がんばってください」と言うようにしている。

自分に足りないものがわかったうえで、「このくらいならできるだろう。自分はやればできるのだから」という自信を持つのは問題ない。
しかし、それがわからないまま、意気込みだけで「がんばればできる」というのはどうだろうか。
それでうまくいくことは、なかなかないはずだ。

世の中には、こうした根拠のない自信を持っている人は意外と多い。
やるべきこともやっていないのに、「自分にはすごいポテンシャルがあるんだ」と信じている、というのもあるが、コラム第3回でも触れたとおり、やることもやらず「やりがい」や「働きがい」を求めてばかりの人もそうだ。
会社から与えられた仕事もやらずに、もっと働きがいのある仕事がしたい。もっとやりたい仕事をやらせてくれる会社に転職したい、と考える人がいるのだ。
「思い上がり」も甚だしい。
自分がどれくらいの市場価値があるか理解もせず、要求ばかりを突きつける「モンスター」が増えてきている。

拙著新刊『絶対達成マインドのつくり方』では、確かに「自信」を身につける手法を解説しているが、根拠のない自信を持つための方法ではない。
確かな「歴史」を自らつくっていくからこそ、正しい「自信」を体得できるのだ。
したがって、本書では、「自信を持ちなさい」「自分にはできると言い聞かせなさい」などとは一切書いていない。
そこに歴史がないからだ。

何かを達成させるためには必ず行動計画が必要だ。
その行動指標に「ロック」をかけて、とにもかくにもやりきる。
まずはそのやりきった「歴史」をつくることだ。

1回や2回、何かをやりきっても自信にはならないだろう。
心がけや精神論など、単なる「思考ノイズ」にすぎない。
自信がないからやりきれない、のではなく、やりきっていないから自信がつかないのだ。

自信がなくとも、自分の決めたことくらいは完遂できる。
何かうまい方法があるから、やりきれるのだろう。だからそれを教えてくれ、という人がいるが、そんなものはない。それは、ただの「思考ノイズ」である。
この「思考ノイズ」をどのように取り除いていくか、詳しくは『絶対達成マインドのつくり方』を参考にしてほしい。