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転職先は“世界”――そうした時代がやって来る

Business Media 誠
郷好文の“うふふ”マーケティングより

海外で活躍する日本人といえば誰でしょう?

野球ならイチロー選手、ダルビッシュ選手、復活するか松井秀喜選手。サッカーなら欧州で活躍する長友選手や長谷部選手、今をときめく香川選手でしょうか。

「野球とサッカー、どちらもこの20年間で猛烈に働き方が変わった。野球ならメジャーリーグ、サッカーならEURO2012にブンデスリーガ、なでしこ。20年前には考えられなかったことですよね。ビジネスも同じです。日本の中で完結するのはラク。でもそれでいいの? そうじゃないと考えたパイオニアもいたんです」

こう話すのは、スポーツビジネスで独立をめざし、東北楽天ゴールデンイーグルスの立ち上げにも関わり、今は「年収1000万円以上の転職サイト」をキャッチフレーズに、新しい人材紹介ビジネスモデルを展開するビズリーチの代表取締役 南壮一郎さん。南さんは、黒い目の日本人ビジネスパーソンが、“正しい価値”で働くこと、そして“海外でリーダーになる道”をつくろうとしている。

●求職のプラットフォーム=ビズリーチ
「やりたいことが3つあります。まず、求職者に正しい選択肢を知ってもらう。当社は求職者からお金をもらっていますが、それは求職者を転職させるのではなく、たくさんのヘッドハンターや企業と会う機会をもってもらうためです」

南さんが2009年4月に立ち上げた「求職者課金型の転職サイト ビズリーチ」は「求職者がお金を支払う」会員制ビジネス。普通は転職が決まった際に求人側企業が人材会社に年収の30%相当を支払う。だが、ビズリーチでは求職者が会費を支払う(30日=4980円、90日間=1万2940円、180日=1万9880円)。

期間内に求人企業(2012年6月現在、650社)とヘッドハンター(同740人)、求人情報(同5800件)と自由に接触ができる選択自由な求職のプラットフォーム。求職者は年収750万円以上(審査あり)、求人情報も1000万円以上とプロに限定している。

「逆のお金の流れ」「自分の価値を知る」「大量の選択肢」ユニークなビジネスモデルにどうしていきついたのか?

ガラパゴス就活列島に住む日本人
「年棒の30%の成功報酬は異常に高い。米国では15%、アジアでは20%。求人広告だって米国ではせいぜい300ドル(約2万4000円)なのが日本では50万円。なぜそんなに高いの? それは企業に採用力がないからです」

経営者や人事採用担当者が採用力をもっていない。だから人材企業に頼るしかない。ところがグローバル企業はアンテナを張り、みずから取る力がある。だから拮抗して費用が安くなるという。

「2つ目が企業に採用力を取り戻すお手伝いをすること。そのために会員企業に求職者12万人分のデータベースをオープンにしています。企業はヘッドハンターと同じ立場に立てる。でもまだ使いこなせないので教育します」

●アジア発のグローバル
「3つ目が日本人に海外で働く選択肢を提供すること。残念なことにアジア企業も欧米企業も日本人を雇いませんかと尋ねると、『まさか』という返事。英語もできない人がアジアや欧米で活躍できるはずがないんです」

南さんは新たにアジア版ビズリーチ「RegionUP」を立ち上げるという。「10万ドル以上のジョブを探そう」という英語サイトで、ヘッドハンターは100社(人)以上予定している。このサービスが実現すれば、求職情報も香港やシンガポールなどアジアに広がる。

「日本人だけのデータベースだと(世界は)誰も見向きもしない。アジアの求職者の中に日本人もいる、という時代をつくりたい」

戦後の日本を振り返ろう。当時、国の再建のため2つの戦略をたてた。まず製造業に特化すること。製造業に大切なのは技術の内部留保である。そのためには技術=人材を流出させないほうがいい。それが終身雇用と年功序列制度。だが今それは崩れた。サービス業中心の時代、人材はグローバルに動いている。

「日本の中で完結するのはラク。でもそれでいいの? そうじゃないと考えたパイオニアもいたんです」

●トルネードとキングから変わった
パイオニアたちが鎖国を変えた歴史がある。

野球でいえば、トルネード投法野茂英雄である。日本球界を任意引退までして、1995年にドジャースに入団。13勝をあげて日本人でも通用することを示した。彼の後にイチローや松井らが続いた。

ではサッカーは誰か?

「中田ヒデじゃないですよ。キングカズ、三浦知良ですよ」

カズも野茂と同じころ、1994年にセリエAジェノアに移籍。1得点、21試合出場に留まったが、日本人が欧州で通用することを知らしめた。彼が起点となり今の海外移籍市場ができた。

ビジネス界でも盛田昭夫本田宗一郎というパイオニアがいた。日本が世界で羨望された時代があった。彼らは「黒い目でも海外でリーダーになる」範を示した。実はそれは、南さん自身が体現する“Swimmy”なる生き方なのである。

●黒い目のSwimmy
彼の著書『絶対ブレない「軸」のつくり方』には、米国のスポーツエージェント事務所にアポなしでどんどん飛び込む壮烈な姿がある。彼がエージェントに送りつけたレターが本に収録されている。その差出人の“Swimmy Minami”が気になった。何だろうか?

スイミー』という絵本がある。スイミーは黒い魚で他の魚と色が違う。海で仲間は大きなマグロに呑まれて、ひとりぼっちになった。旅をするうちに新しい仲間と出会った。「彼らと海で生きたいよ。どうすればマグロに勝てるんだろう?」と考える。

そうだ! スイミーは閃(ひらめ)いた。みんなで群れて大きな魚になろう。赤い魚たちの中で、黒いスイミーは目になる。“大きな魚”を見たマグロは退散するのだ。

親の仕事の関係で、南さんはカナダの小学校に入学する。英語が分からなかったので、先生が読みなさいと差し出したのがこの絵本。「壮一郎」は長くて発音してくれないので、“ミドルネーム”を探していた。Sで始まるSwimmyがそれになった。

「色が違っていてもリーダーになれる。自分が自分の人生の運転手なんですから、自分で決めないと」

彼はまさにSwimmyだが、あなたにもチャンスはある。「ぼくが目になるよ!」と世界の海で泳ぐ準備をしませんか。

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絶対ブレない「軸」のつくり方

絶対ブレない「軸」のつくり方