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第15部 百年の森林〜岡山県西粟倉村から<6>林業再生 世代の使命

(2012年6月19日 読売新聞)

岡山県西粟倉村でつくられた木製品は、どんなところに流通しているのだろう。

間伐材の加工販売を手がける第3セクター「西粟倉・森の学校」の出荷先、東京・秋葉原NPO法人・日本国際ボランティアセンターを訪ねた。

オフィスは9階建てビルの6階。2月下旬、「森の学校」から購入した木製床タイル800枚をフロアに敷き詰め、資料棚も木製にした。室内には、ヒノキの香りが漂っていた。

広報担当の広瀬哲子さん(38)は語る。「手頃な間伐材商品が見つからない中で、この製品は『うちでも使える』と思った。誰にでも可能な選択肢を提示する西粟倉村は存在価値がある」

都会で木を消費し、林業を救おうという取り組みもある。

西粟倉村産の木材を使った「日本国際ボランティアセンター」のオフィス
東京都港区は昨年10月、延べ床面積5000平方メートル以上の新築ビルの内装材や家具に一定量の国産材使用を義務づける要綱を施行した。森林管理が適正と認め、協定を結んだ全国47市町村の製品を推奨する。むろん、西粟倉村もその一つだ。

港区環境課の早藤潔係長(62)はこうも指摘する。

「どこの木が使われるかは競争だ。補助金に頼っていては林業ビジネスは成り立たない」

      ◎

林業の自立へ、国はどんな手だてを打つべきか。内閣改造前、インタビューに応じた鹿野道彦・前農相(70)は率直な言葉を口にした。

自民党時代の1989年〜90年にも農相を経験。「20年間、変わっていないことは反省しないといけない」

森林所有者に関心を向かせる施策が十分打てなかった。森があと10年放置されれば、利用できる森に戻すには、さらに何十年もかかるという。

農林水産省は2011年度を「森林・林業再生元年」とし、仕事として成り立つ林業の育成や需要開拓に乗り出した。木材自給率を現在の26%から、2020年に50%に引き上げる方針だ。

鹿野前農相は「50年、100年単位で考えねばならないのが林業行政。緑という財産を守り、次の代に引き継ぐことは今の世代の使命だ」と語った。

森林の荒廃は、西粟倉村に限らず、先送りが許されない。瀬戸際にあることをかみしめ、一歩踏み出す対策を急ぐべきだ。

                          
<公共建築物等木材利用促進法> 庁舎や学校などでの国産材の使用を促すため2010年10月に施行。国が整備する低層の公共建築物は原則木造とし、地方自治体も国に準じた取り組みが求められる。08年度の公共建築物の木造率は、床面積ベースで7.5%と、建築物全体(36.1%)と比べて著しく低い。

(第15部おわり)