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第15部 百年の森林〜岡山県西粟倉村から<5>「夢へIターン」若者続々

(2012年6月18日 読売新聞)

岡山県西粟倉村では、「百年の森林構想」の進行に伴い、Iターンを積極的に受け入れた。村のあっせんで空き家の民家を月2万円で貸し出し、2007年から34人が村に移り住んだ。

ほとんどが20〜30歳代で、森林再生事業にかかわる。09年5月から村役場で働く松島優子さん(30)は、その一人だ。

出身は横浜。東京農大卒後、神奈川県職員になったが、西粟倉の木製品加工会社「木薫」を林業の専門誌で知った。森に夢をかける仕事が輝いて見えた。

役場では希望通り、産業観光課で森林整備を担当。間伐を進める森の計画を立案し、所有者から一括管理を取り付ける契約交渉を担う。


 「私はチェーンソーを持って山に入れないけど、村の風景をつくる助けをしたいんです」

出会いもあった。木薫に勤める神戸出身の横江孝雄さん(32)と7月、結婚式を挙げる。

09年に岐阜県高山市から移り、木工房を営む大島正幸さん(31)は、村人の温かさが好きだ。

消防団や秋祭りの獅子舞に参加すると野菜が届く。女性従業員2人も広島と熊本からのIターン。昼食時は近所の人もやってきて工房はにぎやかになる。

村に生まれた建設業、小松隆人さん(31)は、同年代の大島さんや松島さんらとすっかり打ち解けた。「村に愛着を持って」と呼びかけた5月のバーベキュー会にはIターン者を含め約20人が参加し、盛り上がった。

大島さんは、この村で生き抜くと決めた。家具の材料の材木を購入する森林の所有者、延東義太さん(72)の言葉から、村人の胸の内にふれたからだ。

山に一緒に入った時だった。延東さんが樹齢85年のヒノキを指し、嘆いた。

 「せっかく大きく育てたのに切るに切れない。こいつは必要とされてないんだ」

ヒノキは軽くて、家具に不向きとされる。以来、大島さんは耐久性のある、ヒノキの家具づくりに没頭している。

 「もっともっといい家具ができれば、この村の悲しみを消せる」。それが技術者としての自分の役割だと考えている。

<森林整備に対する補助金> 国などは間伐作業の費用の7割を補助。これまでは小規模でもよく、かつ木を切り倒せば、その場に放置したままでも交付していた。昨年度からは5ヘクタール以上の面積で、かつ一定量を伐採後、搬出する計画のみに助成する制度に変更、