さんぽ

環境関連、武術、その他、気になったことをつれづれに。

第15部 百年の森林〜岡山県西粟倉村から<4>「村が一括管理」訴え

(2012年6月17日 読売新聞)

岡山県西粟倉村が進める森林再生事業「百年の森林構想」には、森の所有者をはじめ、地元の人の理解が不可欠だ。

4月中旬、村と第3セクター「西粟倉・森の学校」が共同で私有林の所有者向けに「新しい森林づくり発見ツアー」を開催した。事業の前提になる、私有林の村への10年一括管理委託に加わってもらうのが目的だ。

村外在住者を含む8人に、間伐が終わった森林や、間伐材を使った「森の学校」の製品展示現場を案内して回った。

「確かにきれいじゃ」「家の柱として売れそう」。そんな感想に対し、役場の担当課長上山隆浩さん(52)は「必ず皆さんの利益になります」と力説した。

一括管理契約は、村が思うようには進んでいない。

村の山林の多くは、木材需要が高かった1960年代に村有地を村民に払い下げ、植林された。外材の自由化で国産材の価格が下落して林業離れが進み、作業を続けている人は少ない。

構想を理解してもらおうと開いたツアー
それでも、森を村に任せるまでは抵抗感がある人もいる。

ツアーの参加者だった平田新一さん(78)は約15ヘクタールの山林をこまめに手入れしてきた。が、最近体調を崩し、これからを不安に思う。「事業がどんなものかと思って、今日は来た。だけど、10年間も任せっきり、というのもなあ」と腰を上げられない。

1ヘクタール以下の小規模所有者も多く、一括管理をまとめられないと作業効率にも影響する。

一方、新たな構想に賛同して行動を起こした村民もいる。森林組合職員だった国里哲也さん(39)だ。

村の再生の議論に加わるうち、「疲弊した山と都会を直結し、木の魅力を伝えたい」と独立の気持ちが強くなった。2006年に組合を退職し、木製品加工会社「木薫」を設立した。

営業先を幼稚園や保育園に特化。「子どもの安心安全を考えた製品」として机やロッカー、屋外遊具などを大阪中心に約100施設に納品している。

伐採から加工、販売まで自社で行う一貫システム。国里さんは「村の構想から派生した会社で、理念は同じ」と強調する。

林業経営> 20ヘクタール以上を保有して一定の作業をする世帯の林業による所得は、平均で年間10万3000円(2008年度)に過ぎず、20年前の7分の1にまで落ち込んでいる。1ヘクタール以上の山林を持つ世帯は全国に約91万戸。このうち5ヘクタール未満の小口所有者は75%で、採算の取れない零細な所有者が多い。