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第15部 百年の森林〜岡山県西粟倉村から<3>「村の総合商社」始動

(2012年6月16日 読売新聞)

岡山県西粟倉村の森からは、年間2700立方メートルの間伐材が搬出される。その加工や販売を手がける第3セクター「西粟倉・森の学校」は、廃校になった村立小学校がオフィスだ。

ギシギシと音のする廊下を通って教室に入ると真新しい机やイスが、体育館には木造住宅の骨組みが展示されている。

社長の牧大介さん(38)は京都大農学部出身で森林生態学を専攻。村の再生策の検討に加わっていた京都市コンサルタント会社「アミタ」に属するプロデューサーだった。

村に入るうち、「百年の森林構想」にあった間伐材の製品化に乗り出すことになった。

兵庫県に妻子を残し、単身赴任。「地域と林業の再生を形にしたい。小さな村なので小回りもきく」と可能性にかける。前村長の道上正寿さん(62)らの真剣さも牧さんを動かした。

2009年10月に「森の学校」を設立した。アミタの子会社や村、村民が889万円を出資、東京、大阪の就職説明会などで集めた社員20人、パート従業員7人は多士済々だ。2級建築士システムエンジニア、店舗開発の専門家らがいる。

床板タイルなど内装材が主力で、オフィスを中心にリフォームを請け負う。割り箸の生産も始めた。ネットによる販路拡大や社員の人脈を生かした営業で売り上げは10年の2000万円から11年は1億円に伸びた。

ただ、11年でも赤字が約4000万円に上った。今年こそ黒字化を、と力を込める。

「ここは村の総合商社」と牧さんは自認する。西粟倉のファンづくりにも力を入れる。

その一つが観光ツアーだ。吉井川原流のアマゴ捕り、冬に山を登り、霧氷や雲海の見学、ヒノキの机づくりの実習。都会でできない体験に、昨年は親子連れら約400人が参加した。

牧さんらは、間伐作業用の機械を調達するため1口5万円のファンドも創設。ネットの募集で全国から4200万円を集めた。その資金で購入した機械を森林組合に貸し出している。

「森の学校」は、村の再生を支える力になっている。

<植林の拡大> 日本の森林面積の約4割に当たる1035万ヘクタールを占める。戦後の建材の需要拡大などで、1950〜60年代には毎年30万ヘクタール以上を植林。国などの補助金を受け、天然林の伐採跡をスギやヒノキに植え替えた。本格的に利用できる50年生以上の木が年々増加しているが、伐採が進んでいない。